弊社(株)コーチビジネス研究所のコーチング講座を修了され、現在、「一般社団法人日本エグゼクティブコーチ協会(JEA)」の理事(副会長)でもある「長島さんへのインタビュー」を、シリーズでお届けしています。今回はその2回目です。
高校3年生の時に起こったショッキングな出来事を長島さんは語ります。
(長島)
私が高3の時、“それ”が起こります。父親が48歳のときです。
私は受験だったから、母から「病院に来なくていい」と言われていて、あんまり様子がわかっていなくて。病院にはじめて行ったときかな、半身不随になってたので、「ええっ! 大丈夫?」って、びっくりしたんです。父はそのことで、会社を引退することになります。
(坂本)
子どもにとってはまったく想像できない。その前がめちゃくちゃ元気で…
(長島)
そうです。
(坂本)
エネルギッシュで、営業バリバリやっている父が…
(長島)
そうです、そうです。BMWの一番大きいのに乗っていて…
(坂本)
7シリーズですね。
(長島)
そうです。高速走っていた時におかしくなって、そのBMWでうちのビルに「ボ~ン」って、突っ込んだんです。
(坂本)
うわ~っ!
(長島)
あの車だったから父は大丈夫だったんですけど。
(坂本)
すごい話だな。
(長島)
そうなんです。もう大変、大変ということになったんです。浪人はするんですが、ちょっと東京の予備校には行けないな、と思いました。
(坂本)
上智が志望校だったので、東京の予備校に行くつもりだった…
(長島)
私は3番目なんで「好きな事したらええ」と。上智とか早稲田とか、両親には話していましたから、東京でもどこでもウエルカムでした。
(坂本)
すごく幸せな感じだ(笑)。
(長島)
そうですよ(笑)。学校に落ちようが何しようが全然。やっぱり父も母も忙しかったし。それで、なんか東京には行けないなって思って、「じゃあ関西で一番偏差値の高いところ!」…それで思ったのが、同志社の法学部なんです。
(坂本)
ただ、そこなんですよ。「どうして法学部でも政治学科なんだろう」と思った。もともと受験のときにそういう方面に興味があって「 なのかなぁ~」とか、思ってたんですけど。
(長島)
あの… 湾岸戦争とかね、あんなことが起こったり、「朝まで生テレビ」が始まったり、田原総一朗さんがまだ若い頃、ああいう場面に「ちょっと出たいな、私もここで議論したいな」、って。
(坂本)
いいなぁ~(笑)。
(長島)
そう思ったのと、あとはやっぱり予備校のときに、社会のすごくユニークな先生がいて、とっても面白くて楽しかった。それがあったので法学部の政治学科を。もし会社勤めをするにしても新聞記者とかね、そういうお仕事ならしたいって思ってたから。
(坂本)
うんうん。
「内発的動機付け」が起爆剤となり同志社大学法学部政治学科に合格!
(長島)
もう必死で、浪人の間は勉強したので受けた大学は全部受かって… 一番最後の「関学受かってるよ~」って言われた時に受けた龍谷大学だけは落ちました(笑)。
(坂本)
(笑)… そうして同志社に入られて、大学院に。
(長島)
大学院までは、もうとにかく最初から決めてたので、中学生ぐらいから。
私は商売人にはならないし、会社員にもならないし、何か大学教授に憧れていましたから、目標をしっかり持てていたんです。
(坂本)
ブレていなかった。
(長島)
そうです、そうです。大学に入って1年生のときだけは普通に勉強しましたけど、2年生のときからは「この先生に付いて行く!」って、決めたんです。今も「五十嵐先生に付いて行く」というのと同じなんですけど、「この先生に付いて行く」と決めました。それで、もう2年生のときには「私、大学院に行きたいんです」って宣言してたし、「大学院に行くためにはどうしたらいいですか?」って質問していました。先生に…まあ付いて回るわけですよ。今の五十嵐先生と同じです(笑)。
その先生の授業はとにかく全部出ました。「これがいいよ」って言われた本はすべて読むし…あの、アピールするわけですよね。先生の授業は一般も専門の授業も、教壇の真ん前に座ります。「ちゃんと勉強してます!」っていう(笑)。
(坂本)
わかるなぁ~(笑)。今聴いていて、長島さんって、その頃から一つの志向性というか、人格というか…
(長島)
私も今、自分で話していて気づきました。
(坂本)
「出来上がりつつある」というか、当時その歳で…すごいな。
(長島)
いま、私が五十嵐先生に付いて勉強しているのは、昔の…そう、「同じことをしてたな」って。
(坂本)
五十嵐先生…五十嵐代表との出会いは、今回のインタビューのヤマになると思いますから、最後にとっておきましょう(笑)。
(長島)
はい(笑)。
(坂本)
それで大学院に行って… 何年間でしたっけ?
(長島)
マスターは2年で、ドクターは4年ですから6年。ですから10年大学で学んでいます。
(坂本)
それで、大学院時代はどうでした? 楽しかった?
(長島)
いやいやそれはもう大変。人生で一番大変な時期でした。口から心臓が出るくらい緊張するし、大学院生には容赦ないです。「学部生と大学院生って急にレベルが変わるよね」、という扱いになるんですよ。
学部生は「君達、わからないから教えてあげよう」なんだけど、そこが大学院生になった途端に、「えっ? 当然わかっていますよね」って、そういう話し方になるので、それはもう付いて行くのに大変でした。特にマスターの2年間は、修士論文出すのに鍛え上げられて、本当に毎日、駅と大学を往復したことしかなかったし…
(坂本)
ものすごく「何か」というか、その学習経験の蓄積が今のあっこさんをつくってくれているというか…
人生で一番勉強した大学院生時代の学びが今の長島さんをつくってくれた
(長島)
確かに。法律学科は弁護士を目指すとかありますが、政治学科は学科自体が100人くらいで、大学院に行く人は6人だったかな? 女子は私ともう一人の二人で、10年ぶりに女子が入った、という時代でした。大学院の授業って「一対一」とか「一対二」なんです。
(坂本)
厳しさが想像できます。
(長島)
だから喰らいつかないと「もういいよ…」ってなるし、ですから、本当にプレゼンスの能力も上がったと思います。何か自分が調べておいたことに対しても、「えっ、そんなところから質問が来るんだ」っていう。対応というのも発表するのも、「とにかく勉強しなければダメなんだ」っていうね。
発表するのは10分とか20分でも何週間も勉強するっていう、そういうのが身に付いてくるというか、そのマスターのときは… 今思うと有難い経験でした。
(坂本)
思い出したんですが、国連難民高等弁務官だった緒方貞子さんは、ICUの准教授から上智大に移られ、上智での最後のキャリアは、国際関係研究所長、そして外国語学部長を歴任されています。JEA理事で副会長の砂村さんは上智ですが、講義を受けたことがあって、「カリスマ性は凄かった」と言ってました。
CBLのコラムでもたくさん書いていますが、緒方さんは、「とにかく一次情報を集めなさい。それは論文に反映されなくてもいいんです。徹底的に資料を渉猟し、そのことに触れることが大切です。そうやって鍛えられていくのです」、と言葉にされています。
(長島)
そうです、本当にそうですね。
そいうことを徹底的にやらなくちゃいけないことを、大学院のときに知りました。誰かの言葉を引用するときには必ず、「誰々がこんなときにこう言ってました」って補足しないと駄目ですし、「それは私が読んだわけではないので」っていう、こういう枕詞も絶対必要です。そういうことを、勉強させていただきました。本当に人生で一番勉強したなぁ…
(坂本)
絶対そういうのって、蓄積されるっていうか、残るんですよね。
(長島)
そうですよね、そうなんですよ!
(坂本)
そういう時代に、有限である時間を徹底的に使って、頭をフルで使って… 絶対それは残り続けるんですよね。そんな気がします。
(長島)
そうです!
(坂本)
じゃあ、ここから……
「京都シルク」に入られますよね? で、それは「コーチングスカイ」のホームページにも書いてらっしゃるし、そのあたりをお話しいただけますか?
(長島)
はい。受講生の方も興味がおありのようで、昨日も訊かれたんですけど、それは「京都シルク」にビッグバンが起こったんですよ。ものすごく嬉しいビッグバンが。ずっと母が手堅く、女性社長で手堅く、信用を積んだ会社だったんですよね。
(坂本)
ここまでお父さまの会社について、お話をお伺いしました。「京都シルク」は、お母さまが起こした会社ですよね?
(長島)
はい。私が高校2年生のときです。ですから父が倒れる前です。1986年に創業しました。だから、あと2年で40年なんですけど、実家の京都の弟と一緒に。弟は叔父ですけど、別会社の製造を、母の方は営業をする会社という、二つの株式会社で同じ商品を扱うっていう、そういうことで立ち上げた会社です。
シルクはタンパク質なんで、お肌に使うとなじみが良くて綺麗になる。昔から京都の舞妓さんは、糠袋でお顔を洗ってたとか、着物の余り着で、その体を洗っていた。そうすると、肌理(きめ)が整って、白粉のノリが良くなるという。
「そういうことがあったのよ」っていうのを、おばあちゃんから聴いていたんですね。おばあちゃんはもうゴリゴリの京都人なので、いろいろ教えてもらって、2人で商品化したんでしょうね。
ゴリゴリの京都人の「おばあちゃんの体験」が「京都シルク」創業の原点
(坂本)
なるほど。
(長島)
多分、ここはもういろいろあるんですけど、叔父はうちの父の会社にいました。すごく手先が器用で、優秀なタイル施工の職人をしてたんですけど、叔父の気性もあって「もうやめる」みたいなことで、多分出て行ったんでしょうね。母からしたら弟なので、「何とかしてやらないと」っていうことで、会社を立ち上げたんだと思います。これは私の推測ですけど。
(坂本)
「きっかけ」っていろいろありますよね。
(長島)
父と叔父は仲良しなんですよ(笑)。父は包容力のある人だったので、その後も叔父の事はずっと支援をしていました。なんかそんなわけで、母が立ち上げた会社です。私は高校生のときですし、興味もなかったんですが…
だけど、大学院ぐらいからかな、ちょこちょこと「ここの文章を作ってくれ」とか。シルクに関してのコラムみたいなところは、あれは全部私が書いているんです。学生ですけど、「シルクのこと、こんなに勉強してる人いないわ」って(笑)私が自分で思うぐらいシルクと肌のことだとか、繊維のことだとか、蚕の話だとか、そこら辺は私が調べて、ちょっとずつちょっとずつコラムみたいなものを上げていったりしていたんです。何かそういうお手伝いをずっとしてたんですね。
あと、1996年ぐらいなので「楽天」の創業よりも1年前なんですけど、eコマースをやろうっていうことでウェブを。まだそんなときではないですよ。インターネットで申し込みをしていただいて、申込書をダウンロードして、それを入力してっていう、そういう作業ですけども、「こういうことをやろうよ」っていうのも、私がバイトしながら提案し、やっていました、はい。ちょこちょこと、だからお手伝いはしていました。
母の会社の営業の人にいろんなことを教えてもらいながら、ちょっと難しそうなところは、私が文章を書いたり、資料を作ったり、そんなことをやっていましたね。
(坂本)
従業員ではなくアルバイトなんですね。
(長島)
ええ、母は母ですごい手堅い。化粧品会社のOEMなんですけど、弟の工場で製品を作って、母の会社で販売をし、しっかり売上も上げていました。
(坂本)
「京都シルク」は、化粧品も作っていますよね。
(長島)
化粧品は私が入ってからです。その後からですね。母のときは「雑貨」です。生地物なのでミシンを使っての製造です。
(坂本)
テキスタイルということですね。
(長島)
そう、そういうことです。
(坂本)
「京都シルク」のホームページを拝見すると、全国の「H o R 」が、ずら~と出て来ました。提携されていると思うんですけど。
(長島)
あれもOEMなんです、実は。ハウスさんのシルクの雑貨商品は、うちが作ってたんだけど、どこかのタイミングで、「“京都シルク”ブランドの方がいいです。そっちの方が売れます」って言われて、うちのブランドのものも置いてもらっています。
(坂本)
グッドな提案だ。「世界ブランド京都」という地の利がありますし、舞妓さんでシルク。
(長島)
そうなんです、そうなんです!
(坂本)
さっき、「ビッグバンがあった」って、おっしゃったけど、そのことですか?
(長島)
それはまた別なんです。別の話です。
(坂本)
では「ここからビッグバンのお話を」、ということでよろしいですか?
「京都シルクのビッグバン」を訊ねたところ、それが……
(長島)
はい。30歳まで大学院に通っていましたが、結婚し子どもが生まれるというので、一旦休学しようと思ったんですが、先生から「休学だとお金もかかるし、単位は修了しているので満期退学で大丈夫ですよ」、と言っていただいたので「じゃあそうしよう」と。それから「いつでも大学に戻って来ていいですよ」、ともいっていただきました。
産まれるのも楽しみで、じゃあ1年間くらい子育てに専念しようと思ったんです。で、もう1年くらいかな、ぼやぼやしていたときに…… 姉が亡くなるんですよ。
(坂本)
えっ!(絶句……声がしばらく出ない)
お姉さまが亡くなったことが、突然長島さんの口を通して聞こえてきた時、驚きとともに絶句してしまいました。それまで何の前触れもなく、その言葉が出てきたので……。
対話というのは、何となくでも次から出でくるだろう言葉を想像しながら、戸惑わないよう心の準備をして臨んでいるんだなぁ~と、今さらのように気づいた次第です。
「ビッグバン」のお話を聴こうとして訊ねたのですが、いきなりお姉さまの死のお話となります。
次回は「ビッグバン」と「お姉さまの死」について、長島さんが静かに語るところから、インタビューを再現することにします。
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