新型コロナウイルスが確認された2年前に感じたことを思い返しています。
「まさかコロナが2年経っても終息しないとは…」との思いを、2021年の年末になって世界中の人々が共有することになると、誰が想像できたでしょうか。
12月26日の朝日新聞朝刊に、「コロナ2年 世界が学んだ共生」という一面すべてを使った特集記事に目が留まりました。
1964年広島県に生まれ、現在は長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授へのインタビューを軸としたコロナ2年の総括です。
記者が「ウイルスと共存する姿勢が大切だと思います」という意見を込めた質問に対して、山本教授が答えたコメントに共感しました。
戦う相手とみなし、根絶させようとするのは違います。攻撃すれば、相手も強くなろうとする。人を含めて生物は、競争と協調を繰り返し、均衡点を見出してきました。同じ場所で交わっているのではなく、互いにテリトリーを尊重しながら、それぞれの場所で生き続けるのが共存なのです。
私は常々仕事に限らず、生活の中で交わされる会話の多くが「論点先取(せんしゅ)」に侵食されていると感じています。
「論点先取」をグーグルで検索すると、難解な説明が多く登場するのですが、つまり会話が「双方にとっての結論ありき」の状態で展開していくことです。
人には「自分の考えに同意してもらいたい」という願望があります。それが高じてしまうと、論破することが目的化してしまい、他者を拒絶することでカタルシスを得る、という不幸な精神状態に陥ってしまうことにもなりかねません。
岸田首相の「聞く力」
岸田首相は、山本教授と同じ広島県出身です。
岸田首相の打ち出しは「聞く人」です。「聞」という漢字が使われているのは、マスコミがこう決めているのか… 定かではないのですが、できれば「聴」に変えていただきたいなぁ、と感じています。
「聴」の漢字を深掘りすると…
「耳」は、つま先立ちしている人を横から見て耳を強調した象形文字が語源のようですが、門には「音」の意味があって「聞」はそれが合わさった漢字とされています。
他方「聴」は、右側が「14+心」という説と、「10+目+心」の両方が存在するようです。私は後者の「目」が加わった説を贔屓としています。
さらに「聴」は「徳」のつくりと同じです。つまり「聴く」は徳をもった人が五感を総動員しての「きく」姿なのですね。
心理学者のメラビアンが実験の結果を踏まえ明らかにした理論に「メラビアンの法則」があります。コミュニケーションの要因それぞれについて影響度の大きさを割合化したものです。当然、話す内容…言語の意味が大きなウエイトを占めると思われるかもしれません。
話の内容そのものが相手に与える影響はたったの7%!
ところがそれは7%に過ぎず、声の大きさや抑揚、速度や言葉の使い方(たとえば関西弁か東京言葉か、マツコ・デラックス調か…など)、目の動き、笑顔、あるいはイライラした風情が漂っていないか、腕組みをしているのかどうか、といった話し方やボディランゲージという視覚も含めた情報が大きな(ほとんどの)影響を与えていることが示されています。
つまり全く同じテキスト情報にもかかわらず、話す人によっては受容されるか否かに大きな差が出てしまう、ということです。
コーチングにとって最も大切な態度は「傾聴」です。メラビアンの法則を理解し、その上で相手の真意をつかみ、共感するために徹底的に「聴く」のですね。
日本のトップマネジメント、トップリーダーは岸田首相です。就任して早々、公約であった「金融所得課税の見直し」を「当面の間撤回する」、というまさに「君子豹変」でした。この「君子豹変」を、ネガティブな意味として理解している人が多いようですが、本来は「君子」とあるように「優れたトップは、他者の提案、意見が優れていると感じたら、すぐさま過ちを認め取り入れる」という意味なのですね。
「金融所得課税」というテクニカルな政策の是非は正直なところ私は判断がつきかねます。ただ広島人の持つ「未来志向・ポジティブ思考」を岸田首相にも強く感じるところがありますので、「聞く改め聴く力」を発揮され、「新しい資本主義」の創造…格差是正には「調和」が欠かせません…に向かって突っ走っていただきたいと切に希求しています。
渋沢栄一の根幹には「調和」が存在する!
12月26日に『青天を衝け』全41話が完結しました。
最終回は、嫡男であった篤二が女性問題によって廃嫡されたことで栄一の後継者となった孫の敬三が語り手となってのストーリーが展開しました。敬三の視点での栄一像が描かれます。
敬三は後に日本銀行総裁、大蔵大臣となる人物です。それとは別に民俗学者として高い評価も確立したマルチタレントの持ち主です。さらにその妻は、世の中が渋沢栄一の不倶戴天の敵と(勝手に)評価した岩崎弥太郎の孫娘です。
渋沢栄一が日本で最初の経済団体(現在の日本商工会議所)をつくった際に、岩崎弥太郎も賛同したこと(しぶしぶ…といった風情でしたが)が『青天を衝け』の中のシーンにありました。
渋沢栄一が自身の経営している会社の利害を超えて、経済団体の設立に奔走したのは、パークスの「日本には世論がない」という指摘を受けたからです。その世論を形成することは、当時の日本国家にとっての最大目的である「不平等条約改正」のためでした。
私は渋沢栄一のコラムを8回綴っていますが、渋沢栄一の世界観を次のように理解しています。
「フィクションに惑わされることなく、論語を拠り所に現実を見据え、常に中庸(バランス)に気を配り、レジリエンスを駆使して“調和”する世界をつくり上げることに一生を捧げた“リアリスト”」です。
コーチングの「聴く力」の先には「調和」が存在します。 コロナとの共生が実現し、新しい資本主義に向かって歩を進めている初夢を是非とも見たいと願っているところです。
坂本 樹志 (日向 薫)
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