コーチングの『聴く』スキル~積極的傾聴法「アクティブリスニング」~(2019/10/20)

アクティブリスニングとは、米国の臨床心理学者カール・ロジャーズが提唱したカウンセリングやコーチングにおけるコミュニケーション技法のひとつで、相手の話を聴くときのあり方、姿勢、態度、聴き方の技術を指します。「積極的傾聴」と訳されています。相手の発する言葉だけでなく、その背後にある感情や気持ちまで積極的につかもうとする聴き方を言います。

聴く側の心構え

アクティブリスニングでは、聞く側の心構えが重要な役割を果たします。その心構えとして、カール・ロジャーズは「自己一致」「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」の3つをあげています。

「自己一致」とは

行動と発言が一致し、考え方に矛盾や混乱がなく、心が統一された状態を意味します。ここでは、聞き手が相手に対しても自分に対しても真摯な態度で、正直であろうとする心構えです。話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、分からないままにせず、真意を確認するようにします。

コーチングをしているとき、私たちはコーチという役割を演じているのではなく、私たち自身であること、私たちが自分の価値観や信念に気づいていてそれを受け入れていること、自分をよく見せようともせず等身大の自分としてそこにいることが求められます。私たちが感じていること(感情)、考えていること(思考)、表現していること(行動)に気づいていて、その三者が一致していることが大切です。

「無条件の肯定的配慮」とは

相手の年齢、性別、職業などを問わず、また相談の内容を問わず、受容的態度で接することです。話し手のありのままを受容し、話し手の言動や思考に対して否定や評価をしない姿勢です。

「共感的理解」とは

相手の心の基準で相手の言葉を理解することです。話し手の立場に立ち、話し手と同じ視点を持って物事を理解しようとする姿勢です。
相手の目で見るとどう見えるのだろうか。相手の耳で聞くとどう聞こえるのだろうか。相手の心で感じるとどう感じるのだろうか。「相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じる」ことと言えます。

コーチングにおいて、「聴く力」は最も重要で基本となるスキルです。目的は「クライアント(相手)に気持ちよくたくさん話してもらう」ことにあります。悩みや問題を抱えた人の多くは自分の気持ちをわかってほしいと思っています。まずは、ただ黙って聞いてほしいのです。そして一緒に感じてほしいのです。このときに求められるのが、アクティブリスニング(積極的傾聴)です。

◆「相手のために聴く」とは?

コーチの仕事は、ほとんどが相手のために「聴く」ことです。時として、相手のために「聴く」ことは、相手のために「話す」ことより効果があります。「聴く」ことは「話す」ことより、より人間としての本来の力を、発揮しなくてはできない能力かもしれません。そして、この「聞く」能力は、いつからでも開発することができます。

「聞く」を辞書で調べると、
音・声を耳に受ける
注意して耳を傾ける
話を情報として受け入れる
人の意見・要求などを了承して、受け入れる
尋ねる、問う(訊く)

ここまでの意味は、普段の日常会話での「聞く」のようです。
言い換えれば、情報収集、情報交換レベルの「聞く」です。このレベルの「聞く」では、まだ表面的な感じがします。

このほかに「聞く」ことの意味は・・・
感覚を働かせて識別する
当てて試してみる
釣りで、当たりの有無を確かめるために、仕掛けを引いたりして様子を見る
とあります。

これを言い換えてみると、
脳の五感をフルに研ぎ澄ませて、言葉以外の感情やモチベーション、真意や真実を全身で感じとって聞き分ける
「君の話からは、何かまだ気がかりが聞こえてくるよ」といった感じ取ったことを相手に返してあげる
「僕には、まだ何か不安げに聞こえるけど、本当のところはどうなんだい」といったように聞き手は、話し手が本当に言わんとしていることを、受け取っているかを確かめる
といった意味になりそうです。

このレベルの「聴く」は、二人の間に安心感や深い信頼感を生み出します。更には、相手は自分の言葉によって自己を知ることができます。この自分の中にある多くの考えや感情が言語化されて整理された時、人は自ずと答えを探すことができます。この、相手が自己発見をするサポートが、コーチの聴く目的です

「聴く」ときの阻害要因

私たちは人の話を聴いていると思っています。ところが私たちが人の話を聴くときに、阻害要因になっているものがあります。それは次のようなことです。

「自分が正しい」という考えに捕らわれる

この考えは「自分が正しく、相手は間違っている」ということを証明するようになります。そして、違った意見を聞き続けると、相手の意見が正しいことになる(相手に負ける)と思い始めるのです。

聴き手が大きな不安や不満を抱えている

相手を支援しようとする気持ちよりも、自分の感情に捕らわれてしまう。相手の話を聞く前に、まずは自分の心を安定させることが大切です。

相手の役に立つんだ!と頑張りすぎる

相手の「役に立つ」ことを強く望むと、良かれと思いから何とか相手を変えようとします。これは「自分が必要」と思われたい願望の裏返しでもあり、相手の幸福のための行為ではないのです。

「あるべき姿」に縛られている

聴き手の倫理観や道徳観、描く理想像に縛られ過ぎると無駄なエネルギーを消耗し、得るものも少なくなります。価値や理想は人それぞれに存在するので、まずは相手の価値観を尊重しましょう。

「聴く」にはレベル・深さがある

聞くには、「クライアント(相手)が言っていることを聞く」「クライアント(相手」の言わんとしていることを聞く」「クライアント(相手)の言っていないことまで聞く」「クライアント(相手)も気づいていないことを聞く」というように、聞くレベル・深さがあります。

                     

聴くレベル・深さ

深いレベルまで聴き取るには、アクティブリスニング(積極的傾聴)に重要なノンバーバルコミュニケーションと言われる言葉以外の表情や姿勢、視線、声のトーンなどにも注意が必要です。

コーチは「クライアント(相手)も気づいていないこと」を聞き取る力が求められます。そのためには五感を駆使し、クライアント(相手)の言葉以外のものも聞き取るようにします。
クライアント(相手)がどのような感情を持っているのか、本心で話しているのかどうかを感じ取るようにします。そのために、言葉と声の調子や体のしぐさとの食い違いを見分けます。
クライアント(相手)が発した表面的な言葉だけにとらわれず、クライアント(相手)の真の関心事を突き止めます。話の内容を聞かず、アンテナを貼って聞いてみます。聞こうと思ったことしか聞こえない、脳は関心事だけキャッチします。

聴き方の具体的方法

コーチは良き聴き手として、前述の聴く側の3つの心構えを持つことが基本ですが、相手に聴いてもらえていると感じてもらうための具体的な方法としては、次のようなものがあります。

(1)目線

目線において重要なポイントは「そらし過ぎず、合わせすぎない」ことです。視線を合わせることには、心理的な距離を縮める効果があり、信頼関係の構築に大きな効果を発揮します。

(2)ペーシング

クライアント(相手)にペースを合わせることです。話す速度や、声のスピード、トーン、呼吸、しぐさ、姿勢、表情等を合わせることにより、話しやすい雰囲気をつくることができます。

(3)相づちをうつ

クライアント(相手)の話に興味を示し、聴いていることの意思表示をします。
例)「うんうん」「なるほど」「へえ~」

(4)リフレイン(おうむ返し)

クライアント(相手)の言葉を繰り返します。自分の言ったことがクライアント(相手)に伝わっているという印象を与えることができます。
例)A「気分がよくないです」 B「気分がよくないのですね」

(5)うながし(接続詞を使って聴く)

クライアント(相手)に、よりたくさん話してもらうための方法です。
例)「それで?」「それから?」「他には?」

(6)話を最後まで聴く、待つ(沈黙する)

クライアント(相手)の言葉を途中でさえぎったりせず最後まで聴くようにします。またクライアント(相手)が考えているときには、クライアント(相手)に考えをまとめる時間を与え、沈黙して待つということが大切です。

(7)要約する、言い換える

クライアント(相手)の言ったことを要約したり、言い換えてみることで、クライアント(相手)の真意を理解するようにします。

対人関係のポイントは「聴く」にある

経営学者ピーター・ドラッカーはこう言っています。
「多くの人が、話し上手だから人との関係は得意だと思っている。対人関係のポイントが聴く力にあることを知らない」

話すことの主な目的は情報の伝達ですが、その背景に自分を分かってほしい、共感してほしいという思いがあります。発している言葉だけでなく、その背後にある「思い」を感じてほしいのです。
「きき方」次第で、相手の気持ちは大きく変わります。
相手の言葉を聞くだけでなく、言葉の背景にある心を聴くことが大切です。
「きき方」は人間的信頼にも大きく影響します。

「従業員に自分の思いが伝わっていない気がする」「部下のモチベーションが下がっている」「営業で結果を残せない」「人間関係がギスギスしている」「離職率が高い」こうした様々な経営課題も、この「聴く」力を身に付けることができれば、必ず良い方向に変化します。

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