トップダウンからボトムアップな組織風土改革を成功させて、リーダーの育成と共に離職率を大幅に改善したその秘訣とは!?
BAMV 合同会社様は、2018年4月から、リーダーへのコーチング研修及びグループコーチングを導入し、2022年からは、さらに代表へのエグゼクティブコーチング並びにリーダーへの1on1コーチングも実施しています。これにより、トップダウンからボトムアップ型への組織風土改革がなされ、職場のコミュニケーションが良くなって離職率が大幅に改善しました。リーダーに主体性も生まれるようになり、業績の向上につながっています。
この改革の中心人物であるコンサルティング事業部の今野部長にどのようにコーチングを活用して改革に取り組んでいったのか、(株)コーチビジネス研究所取締役の坂本樹志がお話をお伺いしました
【インタビューのご担当者様】
コンサルタント事業部 部長 今野佑哉 氏
インタビュー概要
- BAMV合同会社について
- コーチングの効果の実感を周囲が語り出す
- キーマン今野部長 7回の転職経験から会社をつくるのは、人!?
- キーマン今野部長 会社の改革を語る
- 高かった離職率が大幅に改善する
- 職場のコミュニケーションコーチングで改善
- コーチングで女性リーダーが誕生そして大活躍
(坂本)
本日はお忙しいなか、お時間を取っていただき、ありがとうございます。それでは早速始めさせていただきます。「今野さん」とお呼びしてもよろしいですか。
(今野)
はい、もちろん結構です。
(坂本)
ありがとうございます。
最初にBAMV合同会社とはどのような会社なのか、PRも含め、お願いします。
(BAMVは“バンブ”と発音)
BAMV合同会社とは
(今野)
はい。BAMV合同会社は、2013年8月の設立なので、ちょうど10年となりました。システム開発の専業からスタートしています。2018年にコンサルティング事業部をつくり、現在は、開発とコンサルティングの両軸で展開しています。
組織体制は、システム開発事業部が30名ほど。コンサルティング事業部は10名ほどの人数比になっておりまして、システム開発は少数精鋭でアジャイルを得意とするチームです。
(坂本)
ホームページ(https://bamv.co.jp/)を拝見すると、冒頭の「会社案内」で、御社の歴史と目指すべき方向がシンプルに描かれていますね。
<会社案内>
現代版終身雇用制度の実現を掲げ、代替品の調達が難しいアジャイルソフトウェア開発能力・先進的なWebシステム開発技術に強みを置くべくスタートした会社です。
顧客満足を実現する上でテクノロジーやエンジニアリング以外の武器が必要となり、円滑なプロジェクト推進に重点を置くITコンサルティング事業も運営する事になりました。
能力の高い技術者部隊・PMO部隊の二軸と、それらのシナジーをコアコンピタンスとし、成長を続けています。
アジャイル、PMOという今日的キーワードが自然な形で組み込まれています。
(今野)
ありがとうございます。
アジャイルは、もともとソフトウエア開発の分野で生まれたワードです。「迅速」「機敏」と言う意味ですが、最近はITに限らず、環境変化に敏速に対応していくための「経営手法」、そして「組織の在り方」にも使われるようになりました。
PMOは、ご存じの通り「プロジェクトマネジメントオフィス」のことです。システム開発個々のPMを横断的に支援していく組織としての位置づけです。その部門は私が担当しています。
(坂本)
組織図を拝見しているのですが、開発は2部体制、そしてPMO部門のコンサルティング事業部が今野部長ということですね。横断的という言葉がでましたが、今野さんが全社全体を見られている、ということですね。
コーチングの効果を周囲が語り出す
(今野)
組織上はフラットです。ただ、コーチングが社内に浸透し、明らかに変わっていく過程で、両部長やリーダーが、さまざまな相談やコーチングの素晴らしさについて、私に話してくれるようになりました。
(坂本)
きっと今野さんが皆さんから慕われているからでしょうね。
ところで、<会社案内>の冒頭に「現代版終身雇用制度の実現を掲げ」ていますが、ここは印象に残ります。
(今野)
はい、代表である寺野の強い思いが込められた言葉です。「従業員を大切にしたい」という理念を<会社案内>の冒頭に掲げています。
(坂本)
弊社代表の五十嵐が、寺野社長のエグゼクティブコーチングを担当させていただいていますが、五十嵐から「寺野社長の従業員を思う心はすごく強い」と聴いていますので、まさにそういうことなんですね。
(今野)
ありがとうございます。本当にその通りです。
会社全体の理念を受けて、開発事業部とコンサルティング事業部も独自に理念を打ち立てています。
五十嵐さんから「BAMV合同会社さんには、しっかりとしたカラーがありますね」、とおっしゃっていただいたのですが、採用面接については「人柄を重視」した方針が根づいています。弊社もまだ10年ですし、未経験な方や他業界から来られる方も、「人柄採用」みたいな形で入社される方が多いです。ある意味フレッシュで新鮮な会社かなとは思います。
(坂本)
「人柄採用」ということですが、どんな人柄を重視しているのか、教えて頂けますか?
(今野)
そうですね、「素直さ」と「謙虚さ」という二つを特に重視しています。素直に、人の意見を聞くことができる、物事を発言できる、そして、謙虚な姿勢で、人の意見を受け入れることができる、ということでしょうか。「傲慢にならない」というイメージですね。
それから「熱量」。何か志じゃないですけども、そういった「何か、将来やっていきたいんだ」っていうふうな熱量がある人がいいですね。
(坂本)
ありがとうございます。
さて、コーチングについてですが、今野さんが入社された時は既に導入されていたと聞いていますが。
(今野)
はい、五十嵐さんからご提案をいただいて、弊社代表の寺野が、試験的にコーチング研修をマネジメント層に向けて導入したようです。その後、私が入社したのは2019年の6月ですから、既に実施されている状況でした。
複数人でやるコーチングですから、1on1のコーチングとはまたちょっと違ったコーチングになるんですけども、そこでBAMVの社員が受けているのを見て、「コーチングとはどういうものなのか」と、興味を持ったのがきっかけです。
7回の転職経験から会社をつくるのは人?!
(坂本)
ありがとうございます。
それでは最初に、今野さんのこれまでのストーリーを伺ってもいいですか。
(今野)
そうですね、私が大学3年の2011年の春に東日本大震災大震災が起こっています。就職活動が結構困難でした。内定をいただいた飲食店が最初の会社です。以後、BAMV合同会社に入るまで7回転職しています。
(坂本)
そうなんですか…
(今野)
元々は、スマートフォンが普及し始めたので、スマートフォンのアプリの開発会社を立ち上げたいなと思っていました。さまざまな業界を、営業職中心で転職するなかで、下積みというか、いろんな業界で、苦労されている人たちの話を聞いたりとかをするたびに、「そういうことをちゃんと理解できる経営者になりたい」と思っていたので、結果的に転職を7回ほど繰り返すことになります。
BAMVに入ったのは、2019年の6月なんですけども、その前に知人と会社を立ち上げています。長ければ2年、短かければ1年ぐらいのスパンで転職をしていて、いろんな会社さんを見ていくなかで、会社を立ち上げた時もそうなんですけど、「やっぱり会社をつくるのは人だな」というがあって、いろんな人との出会いを重ねながら、その大切さっていうのを実感しています。
(坂本)
ありがとうございます。さまざまな経験を踏まえ、その蓄積によって、現在の今野さんが在るわけですね。今野さんが目指す理想の会社を求めた結果ということですかね。
(今野)
そうですね。大学卒業後に入社したのは、大手のファーストフードのフランチャイズ企業でした。結構労働環境も過酷でして、なかなかプライベートの時間で勉強するっていうこともできず、考えた末、土日休みの会社に入って、勉強する時間をつくっていこうかなっていうのがきっかけで、最初の転職をしています。
2社目の会社は、飲食店とか美容室にポイントカードの機械を導入して、ポイントを使って運営してもらうみたいなことをやっていました。元々飲食店で働いていたので、飲食店の財務状況を見せていただいて、「こういうところを改善したらいいんじゃないですか」という提案をしながら、営業活動をやっていました。
そこを転職したきっかけはですね、会社ができて間もなくて、社内の空気感もそんなに良くなかった、というのがありました。その頃から、「会社は人だろうな、人がつくるものだろうな」っていうのを感じ始めたんです。
そして、この環境で働くメンバーもみんな辞めていく、みたいな状況になりました。仲の良かったメンバーも退職したということもあり、私も退職することにしました。
転職した3社目は、某通信会社の代理店営業でした。
そこでは法人営業でやりました。これは全国に飛び回るような、もう本当に北海道から沖縄まで出張続きで、そして、課長をやることになったんです。ある程度数字も安定して見えてきたところで、全国営業によって度胸がついたので、本格的にITの世界に踏み込もうと思い、スマートフォンアプリの受託開発をやっていた会社さんに入りました。4社目です。
(坂本)
4社目ではじめてITの業界に入られたんですね。
(今野)
初めてそこで、ちゃんとしたITという業界に入ったんですけども、私が想像していたIT企業とは結構違っていて、バンバン全国を飛び回るような営業スタイルではなく、完全に問い合わせが来て対応するような営業スタイルでした。
(坂本)
受身な感じの…?
(今野)
受身ですね。完全に受身のインバウンド営業のスタイルで、あとは、いろんなイベントとかに出店して、みたいなことを営業がやることが多かったんですけど、私が思っていた営業スタイルとは大きくギャップがありました。ちょうどそのときに「宣伝会議」さんの研修みたいなものを受けさせてもらったんですね。
(坂本)
マーケティング・コミュニケーションに関する総合シンクタンクですね。
(今野)
はい、そうですね。出会ったメンバーの方たちととても仲良くなりました。広告代理店を個人としてやっている方も多く、私が会社を立ち上げるのであれば、広告や広報、ブランディングというのが大事になってくるだろう、という気づきを得ました。そこで、Web広告業界に入ることになります。5社目です。
(坂本)
通常、転職理由というと、どこかネガティブな空気も漂ってくるように思うのですが、今野さんの場合は、それを感じない。ずっと前を向いていますね。
(今野)
そうですか… う~ん、ただこの会社では、ネガティブが出てしまいました(笑)。
Web広告の業界は、まだまだ法整備も整っていなくて、当時はまだ全然整っていなくてですね、何て言うんだろうな… もうガンガンやっていくぞ、みたいな。
(坂本)
ガンガンですか、なるほど(笑)。
(今野)
はい(笑)。いろんな商材が売られたりしている中で、あまり私の好きではない商材とかもよく飛び交っておりまして…
(坂本)
どんな商材ですか?
(今野)
はい、情報商材って言われるもので、「競馬の予想が当たる」とか、「これをやったら儲かるみたいなスクール」とか、あとはそうですね、普通の商品とかももちろんあるんですけど、そういった広告がひたすら流れてくるのを見て、私の倫理観的には、「あまり正当ではない」と…
(坂本)
なるほど…
(今野)
「広告として売り出したくないな」というものもあり、一旦そこから個人事業主に切り替えて、Web制作関係やコンサルティングみたいなことを若干しています。
その後ですね、Web広告だけでなく、オフラインでもオンラインでも両方とも企画から全てをやるような総合広告代理店に入社しています。そこで大手のお客様と、いろんな広告があるんだな、というところを勉強することができました。ちょうどその際に出会ったのが、一緒に会社を立ち上げるメンバーの2人です。私も含めてこの3人が、土台としての「会社とはどうあるべきか」というところから、社是とか社訓だったりとか、そういった基礎固めに2年間を費やしまして、会社を立ち上げるに至りました。
(坂本)
ここで起業されるわけですね。
(今野)
はい、ただ所属の総合広告代理店は副業禁止でした。いろいろ相談してみたんですけども、「やっぱり会社としてはちょっときついな…」となって、そこから会社を立ち上げつつ、業務委託でこの会社からお仕事をもらったりとかしていました。
その後、転職サイトを通して、今のBAMVの方からですね、スカウトメールが来たんです。それで、「一緒に協業をしませんか」というご相談をしたところ、「改善していきたいことがいっぱいあって、社内に入って改善してもらいたい」ということだったので、BAMV合同会社に入社をしたという経緯です。
会社改善をメインに、2019年の6月からやってやるような形で、今に至るという流れです。
(坂本)
ありがとうございます。お話を伺って今野さんが大切にしていることが少し見えた気がします。3.11の時が大学の3年生ということは…今おいくつでらっしゃいます?
(今野)
34になりました。
(坂本)
今野さんは、にこやかな表情で話されので、ホッとするというか、こちらも安心していろいろお話しできます。営業の経験とかも含めて、すべての経験が生かされているんだなぁ、と私は感じています。
(今野)
ありがとうございます。
そうですね… いろんな会社を経験するっていうのは、このご時世、多くなっているかなとは思うんですけど、転職するにあたっても、結構ハードルというのはだんだん高くなっているので、今やれる範囲で、ひたすら20代はいろんな苦労をすることが経験できたかな、とは思いますね。
キーマン今野部長 会社の改革を語る
(坂本)
そして、BAMVさんとご縁が生じ、改善というミッションを携え、4年間活躍されています。この先BAMVさんの中心人物としてどのような展開を考えられているのか、今後のビジョンについてお話しいただけますか?
(今野)
そうですね。私が目指している姿としては、本当にお客様にちゃんと寄り添った開発と、業務改善、事業改善をできる会社にしていきたいなっていうのが、まずあります。
お客様にちゃんと寄り添っていくということができていない会社が多いなと、昨今見ていて思いますので、システム開発とコンサルティング事業の両方とも、「ちゃんとお客様にいいものを届けたい」という思いが強いんです。
だからこそ、最初でも言いましたが、「人柄」を土台に考える会社にしていきたいんです。
お客様が、「導入して本当によかった」と感じていただけるシステムとか、業務のコンサルティングによって問題解決がなされ、喜んでいただける… そのようなちゃんとした会社になっていきたいな、というのを強く感じています。
(坂本)
今野さんから「人柄」、そして「寄り添う」という言葉が何度も出てきます。
(今野)
はい、おっしゃる通りです。
繰り返しますが、人柄採用というか、人柄を重視した採用です。本当にお客様にちゃんと寄り添った開発と業務改善、事業改善ができる会社にしていきたいな、というのが、私の掲げているビジョンです。
(坂本)
今野さんは「人柄」をずっと語られていますが、さまざまな経験から、まさにそのことが今野さんの「人柄」になっているんだな、と感じています。
さて、ここからは、今野さんが2019年にBAMVさんに入られてからのお話をお伺いします。組織の大幅な編成替えをされたということですが、そのあたりからお願いできますか。
(今野)
はい、わかりました。
2019年、私が6月に入って半年ぐらいしてからですね。それまでは経営側、代表と役員のトップダウンの経営でした。「ボトムアップな会社にしたい」と、2人からも意見があったんです。
それまでの体制は、代表と役員がトップにいて、部長を置かず、リーダーに直接指示を出すという状況でした。そこで、役員を一旦組織から外して、部長を事業部単位の長として、その下にリーダーを添えて、経営と部長が、ひたすら意見を交わして、部長からリーダーに方針を示して、リーダーたちが考えるという「ボトムアップの組織構造」に変えました。
2020年の2月から新体制で始めています。その前からコーチング研修は導入されていました。そのときは、エンジニアが求めるモデル像をコーチングでつくっていこう、という方針だったんですね。それで、アドバイザーという役職がピックアップされ、その人たちがコーチングを受けていました。今はやり方を変えていますが・・・。
現在の体制は、私を含めた3人の部長の下に6人リーダーがいます。そしてそのリーダーを支える同じく6人のサブリーダーで構成した組織です。
コーチングについては、リーダーがコーチング研修を受け、そしてリーダーの下のポジションの人たちが研修を受け、次には社内の希望者を募って研修を受け、という形でコーチング研修を循環させています。つまり、マネージャー層だけじゃなくて、下の人たちにも受けてもらう流れに変えたんです。
(坂本)
役職に関わらず、全社的にコーチング研修を展開していったことが、社内の風土改革に
つながっていったことですね。
高かった離職率が大幅に改善
(今野)
はい、社内の風通しはもちろんですが、離職率が大きく改善しました。体制が変わるまでは、離職率が30%と高く、毎年10人位が辞めていくという状況でしたが、コーチング研修を導入してから離職率は1割を下回っています。大きく改善しました。しかも最近入社する人はほとんど辞めていません。
(坂本)
それは嬉しいですね。
実際にコーチングを受けられた社員の皆さんの状況はいかがでしょう。
(今野)
私が入社した当時、コーチング研修を受けていたメンバーは、H、S、T、Yの4人ですが、私も入社してから五十嵐さんのコーチングを受けています。
彼らがひたすらに対話をしながらコーチングを受けている姿を、傍から見ていて、客観視しながら、「こういうふうにこの人は考えてるんだな」というのを知る機会になっていました。
その4人の中のHとYから、「コーチングってとても重要だし、他のメンバーにもコーチング研修に来てもらった方がいいんじゃないか」と意見が出まして、それもあって、体制を変えたタイミングで、コーチング研修というのを、他のメンバーにも回すことにしました。
元々体制を変えたことで、アドバイザーという職種をなくしましたから、「次のコーチング研修どうしようか…」という話をしていたタイミングだったんです。「まずはリーダーから受けてもらおう」といった感じで、試験的にやってみました。
「体制を変更してボトムアップにしていきたい」という意思は、全員に伝えていたので、「どうやったら下から意見が上がってくるか」みたいなことを、結構対話しながら、コミュニケーションしてくれていたようです。
「会社に対して、こうした方がいい」とか、「こうしたい」とかっていう思いは、今まで全然聴くことができていなかったのが、吸い上げられるようになってきました。
これも、私たちのような上の者(部長)が、意図して吸い上げるのではなく、リーダー陣が吸い上げられるようになってきました。これが私の中で、離職率が下がった一番大きな要因かなと考えています。
コーチング研修によって、「リーダーとかサブリーダーがメンバーと対話するときにどういうコミュニケーションを心がけると良いのか」ということが、実感とともに理解できるようになったんです。
(坂本)
その人たちが自発的にコーチングを理解して動いた効果というふうに聴こえたんですが、その受けとめ方でいいでしょうか?
(今野)
そうですね。本人たちからそのように聴いています。
それから、リーダー、サブリーダーではない、メンバーのなかにも、ちゃんとコーチングを受けたいと思っている人たちがいる、とも感じています。
(坂本)
波及効果ですね。
(今野)
ありがとうございます。
職場のコミュニケーションが改善
(坂本)
社内のコミュニケーションはどんな状況ですか。
(今野)
はい、そうですね。先ほどのお話と重複するかもしれないんですけれども、リーダー、サブリーダー、メンバーが、積極的にコーチング研修に参加したことで、対話の仕方みたいなところをすごく意識するコミュニケーションが増えました。「どういうことを本当は考えているのか」という意識です。
つまり相手への関心というか、漫然と会話するのではなく、話をしっかり聴くようになりましたね。ですから、話しやすい雰囲気が出てきて、会社に対して「こうした方がいい」という提案とか、不満も含めて、いろんなことをメンバーとリーダーの間で話せるようになって、上にまでしっかり情報が届くようになりました。いわゆる「コミュニケーションの仕方」が明らかに変わってきた気がします。
(坂本)
どのようにコミュニケーションの仕方が変わったのか、具体例があれば教えて頂けますか。
(今野)
そうですね。特に変わったのが、今まで、「こうしてほしい、ああしてほしい」っていうふうに要求や誘導する質問が多かったんですが、メンバーの想いや意見を聴くようになりました。普段も「業務の話しかしない」みたいなことが多かったんですけど、それがプライベートなことも交え、ちゃんと相手に寄り添った聴き方をするようになりましたね。
業務については、「ここは、だからこういうふうにして欲しいね」「してほしいんだよね」、じゃなくて、「こういうふうにしようと思っているんだけど、どう思う?」、「どれがいいと思う?」みたいな質問の仕方に変わってきました。
(坂本)
いいですね。他にはどうですか。
(今野)
そうですね。コーチングを実際に受けたメンバーで、つい最近あったんですね。先ほど誘導にふれましたが、自分が相手に対して「こういう答えにたどり着いてほしいな」、という質問しかしなかったメンバーのケースです。
そのメンバーも参加する場で、「会社の理念というのを打ち立てたけども、君はどうしていきたい?」みたいなオープンな質問をする機会だったんですけど、ヒアリングされている人は、そこが答えられなくなって、その誘導タイプのメンバーが、「元々は、こういうのを仕事でやっていたよね。だから今、こういうふうになりたいんじゃない?」と言ったんです。
本人からすれば助け舟のつもりで話をしたようですが、「言わされている感じがする、というのがとても多かった」と、指摘されました。本人はそれで気づきを与えてもらったと感じたようです。コーチングを通して気づいたということかな。
それで、「自分の質問があまりにも誘導していることが多かったな」と理解し、結構待つようになりました。
(坂本)
「待つ」… 大事ですよね~
(今野)
「まだ完璧にはできているわけじゃない」と、本人は言っているんですけども、相手からの回答を急かすのではなく待つ。ひたすら出てくるまで待つ。
(坂本)
それは、コーチングを通じて気づいた、理解できた、と受けとめていいのでしょうか?
(今野)
そうですね、はい。
私に報告をしてきたので、そういった報告もしてくれるようになったんだなと感じて、「すごい成長だな」と思いました(笑)
(坂本)
その方は、今野さんの部下ですか?
コーチングで女性リーダーが誕生し、大活躍
(今野)
いえ、私は直接の上司ではないんですけども、会社を全体的に見ているのが私になるので、ある意味、上司にあたるのかな? 元々仲が良くて、何でも相談してくれるっていうのは、あったのですが、こんな細かな自分の気づきとかも報告してくれるようになったのは初めてでした。
あとはですね、Hについてお話しさせてください。元はリーダーをやっていた女性です。そのHがリーダーを降りて、メンバーだったときの話です。
どういうことがあったのかというと、その時のリーダーは、「チームの方針をみんなで決めてください」と伝えています。その際にHは、「リーダーがそこはちゃんと決めた方がいいのでは」と感じて、リーダーに進言したんですね。ただ、状況は変わらない。Hは、コーチにそのあたりの思いを全て打ち明けています。
そのコーチングで、「自分がこうしたい、という思いを持っているから、それをリーダーに求めたんだな。自分がやろうとしないで…」という気づきを得たらしくて、リーダーになることを決意したそうなんです。
私もHにはリーダーに上がって欲しいなと思っていたのですが、なかなかその気になってくれなくて、それがまさかコーチングを通して、そんな話が繰り広げられているとは思ってもみませんでした。
ですから、メンバーのときに体験したコーチングで、自信をつかんだということです。受け身ではなく、「上司に判断してもらおう」という態度を改め、「自分で決めて、自分の責任でやっていこう」となったんです。「1on1のコーチングの中で気づきを与えてもらった」と本人は言います。
コーチングの際、そのコーチが「何が一番好きなの?」とか、「楽しいって思えるのはどんなとき?」… そんな話をしてくれたようです。そこから自分で深掘りして次のコーチングのときには、さらに深まった結果を報告して、そういうセッションを経て、自分の気持ちが固まっていったわけです。
さまざまな問いかけによって「後押し」してもらっていることを実感し、リーダーとして自信をつけて軸が形成され、Hのチームが出来上がったんですね。
それから、ちょっと遡りますが、時系列で言うと、Hがリーダーを降りていた時は開発事業部の事業部長が一人で、3人のリーダー体制でした。その後でHがリーダーとなって、4人のリーダーによる4チームとなります。部長も2人体制に改変しました。そして一人の部長に替わって、現在はHが部長となって切り盛りしてくれています。
(坂本)
なるほど… コーチングを背景とした成長物語のようですね。
(今野)
ええ、コーチングです。壁打ちじゃないですけども、何でも相談に乗ってもらえる。プライベートの相談も乗っていただいたようで、私生活も充実し、とても前向きに仕事に取り組んでくれています。
本当に、五十嵐代表がアテンドしてくれたコーチの方が、受ける側にとって、とてもぴったりな方なんです。
(坂本)
ありがとうございます。
(今野)
うん、そうですね。Hについては、本当にプライベートなことで、去年だったかな? 土日か何かに骨格診断をやって、コーチに紹介いただいたスタイリストの人と一緒に服を買いに行った、そんなこともありました。
あとは… コーチととっても相性の良い美容師、美容院を紹介してもらって、そこで、もう思いっきり髪の毛を短くしたりとか、いろんなチェンジが起こっています(笑)。
(坂本)
いいですね~(笑)
今、壁打ちっておっしゃったけど、Hさんは「コーチングが素晴らしい」ということを社内に伝播してくれているようですね。
(今野)
はい、そうです。なおかつ、うちの代表はそれまで、コーチングは受けていなかったんですけど、Hがですね、「代表も受けた方がいいですよ」と提言をしてくれて、そこから代表が、五十嵐さんにお世話になることになりました。
(坂本)
そうなんですね。
(今野)
はい、なので代表は、去年の夏ぐらいから受け始めたと思います。そうですね。Hは多分、いろんなメンバーに、「コーチングはすごい」「こういうところがいいよ」というのを伝えて回ってくれるので、コーチングのグループ研修はですね、年に1回切り替えているんですけど、受けるメンバーをどんどん誘ってくれて、おかげさまで、ちょっと順番待ちの状態が続いています。
(坂本)
いや~ ありがとうございます(笑)。
(今野)
そうですね、最初に話した誘導の話はBという者の話でした。BとHのお話はさせていただいたので、あと一人、Kについて紹介させてください。Kはコーチングを受ける前は、成長スピードがゆっくり、というタイプでした。
(坂本)
Kさんのポジションは?
(今野)
はい、リーダーです。Kは、元々リーダーになったばかりのタイミングで、個人研修がスタートしています。リーダーとしてどういうチームにしたいのか、全くイメージがない状態のままリーダーをやっていました。
そういう状況で、コーチングでも相当大変だったのかなとは思うんですけども、一歩一歩進むタイプなので、どういうチームにしたいかっていうのを、ひたすら多分話し合っていたんだと思います。それが今年の春ぐらいに、「急に自分はこういうチームが作りたい」と言ってきました。
「自分のチームは全員が、組織を引っ張れるような人たちで構成したい、そういう人たちになってほしい」という思いが急に出てきたんですよね。それで「どうしたの?」って訊いたら、「コーチングでずっと深掘りしていた」と言うのです。
Kは元々、「楽しければ何でもいい」みたいなタイプだったんですけども、コーチングによってK自身が、過去の経験を振り返り、「やっぱり引っ張ってくれる人たち、リーダーとして組織を、チームを引っ張ってくれる人たちにすごい助けられて、そういう人たちと仕事をすると楽しかった」ということを、コーチとの対話で深堀ができた、そのことに気づかせてもらった、という話を聴きました。
僕とかがKと話しをしていたら、多分、数年間はたどり着かなかったと思います。本当にそれぐらい、根気よく深掘りしてくれたのだと思います、コーチの方に。
もともとそのミッションは渡していたのですが、1年も経たずですね。今年の春くらいなので、10ヶ月かな? それぐらいで、できるようになりました。多分、プロジェクトでその当時は、「自分は結構動いているけど、他の人がなかなかついてきてくれない」みたいな悩みがあったと思います。
ですから、多分深掘りをしてヒントを得たのかなと感じています。そこから「こういうチームにしたい」というのが出てきて、Kの考えは「みんながリーダーをできるようなチームにする」ことでしたから、今みんなが週替わりで、リーダーの経験ができるようなアクションをしています。
実際に、メンバーは、「ちゃんとリーダーとしてやらなきゃいけない」ということを、だんだん感づいてきたようで、まだそのトライ中なんですけど、K曰く、「結構喋るようになった、元々全然喋らないような人が喋ってくれるようになった」ということが、効果として現れ始めているようです。
(坂本)
なるほど… 私はコーチングの効果を「見える化」させていくことがミッションでもあるのですが、今野さんのお話はその効果が明快ですね。自然体でお話しされている。
(今野)
(笑)… そうですね。本当に毎回見ていて、「成長スピードは人それぞれ」というのも楽しいんですけども、「実際に成長しているスピード」が感じられて、そのことを教えてくれるという環境がすごく嬉しくて、何人かのケースをお話ししましたが、とにかくコーチングを受けてもらってよかったなと感じています。
五十嵐さんからすごいコーチをアテンドしていただいて、コーチの方が「とても根気よくやってくれたんだな」ということを実感しています。
(坂本)
いや~ ありがとうございます!
(今野)
私が、日本エグゼクティブコーチ協会の「法人会員交流会」や京都の料亭の鶴清で実施された「地域交流会」などに出るようにしているのも、皆さんにお礼を言いたくて、参加しています。
(坂本)
京都の時はテーブルが違ったので、お話しできませんでしたが、今野さんはいつもニコニコされている。人は五感で感じます。こうやって、ずっ~とお話をお伺いしているうちに、BAMVさんの会社の雰囲気を勝手に想像してしまいました(笑)
(今野)
いえいえ…(笑)。
(坂本)
そろそろ時間でしょうか。改めてになりますが、会社として、BAMVさんがどのような体系を組んで、コーチングを導入されているのか、お願いいたします。
(今野)
はい。1対1で継続的にお願いしている1on1のコーチングは、7名が受けています。部長とリーダークラスです。日本エグゼクティブコーチ協会のエグゼクティブコーチ5名の方に担当していただいています。それから代表については、五十嵐さんにお願いしています。
グループ研修のコーチングは4年続けているので、15人から20人くらいは既にコーチングを経験しています。今年は4~5人の受講体制です。セッションを通じて、お互いを知ってもらい、そして「人として成長していこう」というテーマで1年間、毎月1回実施しています。こちらは五十嵐さんにお願いしています。
(坂本)
ありがとうございます。最後に、今野さんの思いをメッセージという形でお願いできますでしょうか。
(今野)
ありがとうございます。
私も最初入ったときは、コーチングがどんなものかわかりませんでした。いろいろお話しさせていただきましたが、コーチングは仕事だけじゃなくて、人生においてとても大切なことだと思います。このことは、五十嵐さんがいつもお話しされます。私の中で「コーチングをやっていてよかったな」って思える一番のポイントです。
仕事以外にもプライベートの相談にももちろん乗ってもらえますし、あとは教えてもらうのではなくて、気づかせもらうということですね。個人個人の体験としてとても重要です。特に組織に所属している人が、「自分で気づいて自分で考えて自分で行動する」。それを、ちゃんとそばにいて、一緒にずっと走り続けてもらえるっていうのは、すごく大きなことだと思います。
コーチングによって、大事な人になれる、組織の重要なキーマンになれるんだ、と思うことが出来るようになるので、全従業員に導入する予定です。
導入して良かったと、言ってくれる人が、うちの中では大多数です。ほとんどのメンバーが言ってくれています。私だけじゃなくて、みんな「自分たちの成長に繋がっている」という実感があるんです。
(坂本)
ありがとうございます。
「全員に導入したい!」と、力強くおっしゃっていただきました。4年前に今野さんはBAMVさんに入社され、そして化学反応といったらいいのかな… みなさんが変わってきた。そのコアにコーチングがある。コーチングがもつ力を感じることができました。
(今野)
ありがとうございます。
コーチングを導入していて、一番やっぱり大きく変わったのは、コーチングを通して人をしっかり見ることの大切さに気づいたことです。採用面接については従来、幹部のみでやっていましたが、メンバーも参加してくれています。
みんなで、ちゃんとその人柄を見て採用をして、みんなが一緒に働きたいと思える人たちを採用する。「私はこの人と一緒に仕事をしたいな」… そういう共感を大事にしたい。
(坂本)
共感ですね。
(今野)
はい。コーチングを導入したことで、一人ひとりが自分ごととして会社に興味を持ってくれるようになりました。あとは、うちの会社は若いかもしれないけれど、これから先の人生を考えるメンバーが増えてきました。
会社がこれからどういう方針でいくのか、そこに自分がどのような役割を発揮することができるのか、みたいなことを考えて、意見を出してくれるメンバーがとても増えた。
コーチングは本当にただのスキルではないと思います。コーチングを通して人として成長し、従業員や組織が幸せに向かえるベースになるものだと感じています。
(おわり)
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