コーチングは組織変革の手段でもある(2020/01/16)

コーチングは「個人のためのスキル」から「組織変革の手段」へと、その活用の場が広がっています。コーチングが日本に導入された当初は、「一人一人のより良い人生をサポートする」とか「その人の人生をどう設計するか」といったテーマを扱う個人向けのコーチングが主流でした。今でもライフコーチとして活動しているコーチが多くいます。

その後、企業でマネジメントに活用するビジネスパーソンをはじめ、教育関係者や医療関係者、コンサルタントや専門家などにも広がるようになり、コーチングはさまざまな分野で活用、展開されるようになりました。

今では、個人のみならず、「組織開発」や「人材開発」の手法として、多くの企業、組織において、リーダー、マネージャー育成、組織風土改革のためにコーチングが導入されています。

価値観の多様化

価値観が多様化している現代、「右向け、右」で、人が一斉に右を向くことはなくなりました。これまでのように一律に知識やスキルを身に付けさせることだけで、人の能力を開発するのは難しくなっています。チームのメンバー一人ひとりの持っている力を最大限に発揮させていくためには、一律の教育から個別対応が必要になっています。その一つの可能性がコーチングです。

従来のマネジメント教育は、部下を管理して、いかに効率よく仕事させるかに焦点がありました。無意識のうちに部下を自分の思い通りにしようとしていなかったか、コントロールしようとしていなかったかに注意が必要です。人は管理されることで依存型人材となります

「うちの社員は指示待ち人間ばかりで困る」「もっと自分で考えて行動する社員が欲しい」と、多くの経営者は言います。しかしながら、知らず知らずのうちに、相手を管理し、意に反して依存型人材を育ててしまっていることがあります。人を育てようと思いながら、なかなか人が育たない原因は、自分が今やっていることが、管理型になっていないかに目を向けてみることです。

時間がないからと、具体的な行動を指示してしまっていませんか?

こちらの言った通りに行動させようとするほど、部下は依存型人材になってしまいます。
つまり、自分で考え、自分で判断することを放棄するようになります。言われたとおりにやっていれば楽だからです。次第に、自分から意見を言わなくなり、いつも指示が出るのを待っているだけになってしまいます。

例えば、次のような言動になっていないか、注意が必要です。

(1)部下が納得していないのに、やらせる

「仕方ないじゃないか、仕事なんだから・・・」
「会社の指示なんだから、言われたとおりやっていればいいんだ」
など、何のためにやるのか、目的も考えず、納得しないまま、ただ言われたことをやることで、自発性を失っていきます。

(2)リーダー自身があきらめてしまっている

「そんなこと、うちの会社でできるはずがないだろう」
「どうせ、上がダメというに決まっているよ」
自分の思い込みや経験から、管理者、リーダー、マネージャー自身が「会社なんてこんなもんだと、どうせ言っても無駄だ」と諦めてしまっていると、部下も同じような言動になってしまいます。

(3)部下の話を聴かない

「それなら聞かなくても分かっているから、〇〇にしておいてくれ」
「今忙しいから後にしてくれ」
部下が話したいと思っているにも関わらず、上司が聴く耳を持たないと、信頼関係がなくなり、上司が困っていても知らんぷりするようになります。

(4)部下に責任を押しつける

「俺はどうなっても知らないからな」
「お前のせいだぞ」
失敗を許さず、責任逃れする上司の下では、上司の言われたとおりにしか動かないようになります。

(5)上司自身が他の人の仕事に関心を持とうとしない

「それは私の仕事ではない」
「私には関係ないことだ」
他人の仕事に関心を持つ必要はない、と部下も思ってしまいます。

コーチングは単なる型やノウハウではない

人の力とやる気を引き出すコーチングは、リーダーやマネージャーにとって必須のスキルとなっています。現在コーチングはかなり普及してきましたが、残念ながら、いまだにコーチングは、上司が部下をコントロールするテクニックだとか、聞く姿勢や言葉かけ、態度といったビジネススキルの一つだと思われているところがあります。しかしコーチングは、型やノウハウではありません。どちらかと言うと、私たちがよりよく生きるための哲学や思想、人間観に近いものがあります。型やノウハウで人の心を動かすことはできません。

コーチングの組織における活用場面

コーチングは、一対一の会話による方法が中心ですが、グループコーチングやチームコーチングと言われるようにグループやチームを対象に実施することもあります。
現在会社などでは、具体的に次のような形で活用されています。

1.経営者や経営幹部にコーチをつける

経営者や経営幹部にエグゼクティブコーチをつけ、一対一でコーチング(経営者の目標達成や課題解決をサポート)をしていきます。

2.マネージャーにコーチをつける

部課長などマネージャーにコーチをつけ、一対一またはグルーブを対象に部下育成などのマネジメント課題や目標達成をサポートします。

3.一般社員にコーチをつける

一般社員に社外のプロコーチをつけることによって、上司には言えない悩みを引き出すなどメンタル面を含め、社員一人一人の成長をサポートします。

4.one on oneミーティング

上司が部下の面談をすることをono on oneミーティングと言いますが、現在多くの企業で、コーチングを取り入れたono on oneが行われています。

5.会議の活性化のためにコーチがファシリーター役を務める

会議が単なる報告会に終わってしまっているなど会議の形骸化が指摘され、会議のあり方が常に課題になっています。社外のプロコーチに、ファシリテーターを依頼することによって会議の活性化を図っています。

6.リーダーやマネージャーに対するコーチング研修

リーダーやマネージャー自身がコーチングの考え方やコーチングスキルを身につけて社内で展開できるよう社内コーチを育てます。

コーチングの主体はコーチングを受ける人にある

コーチングは、基本的にコーチングをするコーチとコーチングを受ける人の一対一で行います。ここで重要なことは、コーチが先導したり強制したりしないことです。コーチングは相手が主体性を持ちながらそれを実現するところにあります。本人が自ら見つけ出すというプロセスを踏むことで、はじめてそのアイデアはその人のものになります。一方向ではなく、双方向でアイデアを出し合い、検討し、それを行動に移すためのアイデアも双方向のコミュニケーションで生み出すところに、コーチングの特徴があります。

より良い人間関係の基本は「ストローク」にあり(2019/12/12)

ストロークとは

私たち人間の肉体は栄養や睡眠を必要としています。それらがないと健康な状態で生きていくことができません。人間の心にも、『人との接触から得られる刺激』が必要であると言われています。この人とのふれあいがないと、人間は心のバランスを失ってしまって、心身の健康を保つことが難しくなってしまうというのです。

私たちが社会的な生活をするうえで、人との接触から得られる刺激をストロークと呼びます。ストロークという言葉の意味は、“なでる”“さする”“愛撫する”などの意味がありますが、ここでは、「他の人の存在を認めるための行動や働きかけ」と定義します。

アメリカの精神分析医エリック・バーン博士は、「幼児に十分なストロークが与えられないと、その子の脊髄は萎縮してしまい、肉体的にも、情緒的、精神的にも成長が遅れてしまう」と言います。

子どもは成長するにつれて言葉を覚え、言葉を使って生活ができるようになっていきます。そうすると、幼児の頃の肉体的な接触の欲求から、ほめられたり、うなずかれたりして、自分の価値、自分の存在を認めてもらえる“心のふれあい”を求めることに変わっていくと言われています。このような言葉や無言の動作によって与えられるストロークのことを『心理的ストローク』と言っています。

人間は、無視されたりして、ストロークをもらえないと、『ストローク飢餓』の状態になってしまいます。そうすると、例えば、母親や父親とふれ合いの少ない子どもは、わざと叱られるようなことをすることがあります。叱られるようなストロークのことをマイナスのストロークと言いますが、マイナスのストロークであっても、全く関心を示してもらえないストロークがない状態よりはいいので、無意識的にそれを求めるようになってしまうと言われています。

ストロークの種類

ストロークは、下図に示すように、その刺激が肉体的なものか、心理的なものかによって、肉体的ストローク心理的ストロークの二つに分けられます。また、そのストロークの内容が、受ける側にとって肯定的な意味を持っているか、否定的な意味を持っているかで、肯定的ストローク否定的ストロークに分けることもできます。

「こんにちは」「おはようございます」などの挨拶、あるいは「あなたに好意を持っている」とか「あなたは素晴らしい」などの肯定的な言葉は、すべてプラスのストロークです。

反対にマイナスのストロークとは、受け取った相手を不愉快な気持ちにさせるものです。 「あなたが嫌いだ」「お前の顔など見たくない」「近寄るな、あっちへ行け」などの、相手を傷つけたり怒りをぶつけたりする言葉がそれにあたります。

表情でいえば、プラスのストロークの典型的なものは笑顔であり、マイナスのストロークを示すのはしかめっ面や怒りの表情ということになります。

ストロークの種類

  肯定的ストローク 否定的ストローク ストロークではないもの(ディスカウント)
肉体的ストローク なでる、さする、愛撫する、抱擁する、握手する、など 叩く 殴る、ける、暴力をふるう、突き飛ばす、殺す
心理的ストローク ほめる、励ます、微笑む、うなづく、挨拶する、相手の眼を見る、相手の話をよく聴く、信頼する、任せる 叱る、怒る、制止する 皮肉を言う、嫌みを言う、けなす、無視、無関心、仲間外れ、情報を流さない

ストロークにも良いストロークと悪いストロークがあり、それによって私たちは、育ったり損なわれたりします。しかしながら、たとえどんなに悪いストロークであっても、ストロークの特徴は、相手の存在を無視しないで、認めることです。それに対して、ディスカウントは、存在を認めないこと、価値を認めないこと、関心を示さないことをいいます。

より良い人間関係を築くには

エリック・バーン博士は、「人は何のために生きるのか…それは、ストロークを得るためである」と言っています。

人間は誰しも、他の人から触れてほしい、他の人から認められたいという欲求を持っています。お互いに、認め合い、心のふれあいが持つことが大切です。肯定的なストロークを受けた時には気持ちがいいし活き活きし、自信を持つことができます。

そこで、相手の人が欲しがっているストロークを与えることができれば、より豊かな人間関係を築いていくことができるはずです。ところが、なかなかそうはうまくいきません。なぜなら、私たちは皆、それぞれ自分なりのストロークの与え方、受け方のくせを持っているからです。

私たちは、子どもの時に両親や学校の先生などから、しつけを受けて育てられてきましたが、その過程の中で、一時的にもせよ、愛情を与えれなかったり、叱られたり、ほめられたり、無視されたりしてきました。こうした幼児期のしつけを受ける過程の中で、他人とのかかわり(ストロークの与え方や受け方)を自分なりに身につけてきています。そのため、よりよい人間関係を築いていくためには、次のようなことに注意する必要があります。

  1. 自分のストロークの与え方、受け方の傾向をつかむ
  2. 肯定的なストロークを与える
  3. 相手の存在を無視(軽視)しない
  4. 条件つきの肯定的ストロークを避ける(相手が自分の期待にそった行動をとった時にだけ与えられるストロークを“条件つきのストローク”と言います)。
  5. 相手に対して誠実で真摯なより深いストロークの交換をする

自分と他人に対する基本的な信頼感の質と量は、幼少時にどのようなストロークやディスカウントを受けたかに強く影響されると言われています。

肯定的なストロークの貯蓄

人に肯定的なストロークを与えるには、まず自分の中に、肯定的なストロークがたくさん貯まっていることが必要です。自分の心の中に、肯定的ストロークがたくさん貯蓄されていると、相手の人に対しても肯定的なストロークを与えることができ、お互いに肯定的ストロークを与えたり、受けたりすることができ、益々肯定的ストロークの貯蓄を増やすことができるようになります。

ところが、これとは反対に、肯定的ストロークが少しずつしか貯まっていなかったり、否定的ストロークが貯まっていたりすると、憂鬱な気分になり、何事に対しても“つまらない”と思うようになってしまいます。

職場のストローク環境を整える

肯定的ストロークの貯蓄のことを考えると、いかに職場における管理者・監督者の役割が重要なものかが分かると思います。部下やスタッフの人たちが、自分の能力に自信を持ち、その持てる能力をさらに発揮するためにも、職場のストローク環境を整えていくことが必要です。そのためには、管理者・監督者自身が、自分の肯定的なストロークの貯蓄を増やして、部下やスタッフにも肯定的なストロークを与えていくかなければなりません。職場のストローク環境をつくりあげていくのは上司の責任だけではありません。職場全体の肯定的なストロークを与え合うような環境を整えることが大切です。

パワハラ防止法にどう対処するか~厚生労働省がパワハラ防止法指針案を発表~(2019/12/04)

バワハラ防止法(職場でのパワーハラスメント防止措置を企業に義務付けた改正労働施策総合推進法)が2020年6月(中小企業は2022年4月)から施行されるのを受け、厚生労働省は2019年11月20日指針案を示しました。

パワハラ法については、下記の記事も併せてご覧ください。
https://coaching-labo.co.jp/archives/2439

パワハラ(職場のパワーハラスメント)の定義

パワハラ(職場のパワーハラスメント)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。

【2019.11.20厚生労働省指針案の要旨】
職場におけるバワーハラスメントの内容

<職場におけるバワーハラスメント>

職場において行われる言動で次の①から③の要素をすべて満たすものをいいます。
①優越的な関係を背景とした言動である
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである
③労働者の就業環境が害されるものである

<職場とは>

事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所
当該労働者が通常就業している場所以外であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については「職場」に含まれる。

<労働者とは>

正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用するすべての労働者

<優越的な関係を背景とした言動とは>

当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。

    (例)
  • 業務上の地位が上位による言動
  • 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、抵抗又は拒絶することが困難であるもの

<業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動とは>

社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないもの。

    (例)
  • 業務上明らかに必要のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして、許容され る範囲を超える言動

<就業環境を害することとは>

当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

パワハラ(職場のパワーハラスメント)の6類型と具体例
パワハラ類型と主な具体例

パワハラの6類型 該当する行為
(主な事例)
該当しない行為
(主な事例)
1 身体的な攻撃
(暴行・傷害)
・相手に物を投げつける ・誤ってぶつかる
2 精神的な攻撃
(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
・人格を否定するような発言をすること
・必要以上に長時間、繰り返し厳しく叱る
・他の労働者の面前で大声での威圧的な叱責を繰り返す
・能力を否定し、罵倒する
ような内容の電子メール等を送信すること
・遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動 ・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意すること
・重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意すること
3 人間関係からの切り離し
(隔離・仲間外し・無視)
・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長時間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修をさせること
・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること
・新規採用労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること
・処分を受けた労働者に対して、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること
4 過大な要求
(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること
・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業務を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること
・労働者の業務とは関係のない私的な雑用処理を強制的に行わせること
・労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
・業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること
5 過小な要求
(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること
・気にいらない労働者に対して嫌がらせのための仕事を与えないこと
・経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること
・労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること
6 個の侵害
(私的なことに過度に立ち入ること)
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること
・労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと
・労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと

(厚生労働省の資料を基に作成)

事業主が取り組むべきこと

前述のように、バワハラ防止法(職場でのパワーハラスメント防止措置を企業に義務付けた改正労働施策総合推進法)が2020年6月(中小企業は2022年4月)から施行されます。厚生労働省の指針案にも示されているように、事業主として以下のような対策を講じることが必要となっています。

  1. 職場におけるパワーハラスメント問題に関する研修の実施と必要な配慮
  2. 職場におけるバワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置
    • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
    • 相談窓口の設置等
  3. コミュニケーションの活性化や円滑化のための必要な取り組み
    • 定期的な面談やミーティングの実施
    • 感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修の実施等

パワハラ防止に不可欠なコーチング

パワハラの防止は、規定や制度面の整備も重要ですが、なぜ、このようなことが求められているのか、その背景と趣旨、目的をよく理解することが大切です。この度、厚生労働省から指針案が示されましたが、これらはほんの一部でしかありません。基本的には、一人一人の尊厳を重んじ、相手が不快に思うような言動をしないという人間として当たり前ことが求められています。

パワハラが起きる大きな原因は、社内風土や人間関係にあります。指針案にも示されているように、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化を図ることが必要です。リーダー、マネージャーのみもならず、全社員に対し、パワハラ問題に関する教育研修はもちろん、人間関係改善、面談スキルの向上やメンタル面の教育が求められています。さらに、労働者の感情をコントロールする能力、コミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図ることの必要性も指摘されています。

これらをすべて解決できるのが「コーチング」です。コーチングには、「人は皆人生の主人公である」「人は無限の可能性を持っている」「相手のことを100%受け止める」「答えは相手の中にある」といった大切な考え方があります。

これらのコーチングの考え方を軸にして、コーチングスキルを身に付ければ、いわゆるパワハラに該当するような言動が起こることはありません。コーチングを学ぶことで、自分自身の感情をコントロールするセルフコーチング力も高めることもできます。パワハラ防止のためにも、全社員を対象にコーチング研修を導入することをお勧めします。

受容と共感(2019/12/02)

受容とは

受容とは、クライアント(相手)の言葉、感情などを、自分の価値観で批判したり評価をしたりせず、そのまま、ありのまま受け止めることです。

そのためには、100%相手の味方になることが必要です。100%相手の味方になるということは、相手を絶対に拒否しないということです。相手からどんなことを伝えられても、拒否せず、いったん受け止めることが重要です。

私たちは誰かから話を聞くと、聞いたことに対して評価やアドバイスをしようとしたり、相手に議論を仕掛けたくなったりします。会社で部下を評価する時は、自分を軸にして、部下のマイナス点を探してしまいがちです。上司は100%部下の味方になって、ありのままを受け止めることができなければなりません。

受容的な態度で聴く

相手の話を聴くときには受容的な態度で聴きます。キャッチャーミットのように、どんな球が飛んできても、しっかりと受け止めることです。クライアント(相手)が話しているときに、途中で意見を挟まないで、「ああそうか」「なるほど」などと最後までしっかり聴くことが大切です。そのためには、次の三つのことを心がけましょう。

第一に、自分の評価や判断を入れずに、ニュートラル(中立)な気持ちで相手の話を聴きます。コーチ自身が、自分の思い込みや固執した考え方をしていないかに注意することが大切です。

第二に、コーチ自身が精神的ゆとりを持ち、安定感のある状態を維持していることが大切です。聴き手であるコーチ自身の体調が悪く、イライラ、怒り、不安感を抱えている状態では、相手の話を聴くことなどできません。

第三に、自己中心的な考え方をしていないかに注意しましょう。自分には力がある、相手から凄い人だと思われたいなどと思っていないか、自分と対話してみましょう。

 

ニュートラル(中立的)な気持ちで人の話を聴けるようになるためには、自分にどんな傾向があり、どういう時に反論や批判、怒り、イライラが生じてしまうのかなど、自分自身の性格や行動特性を客観的に観ることができるようにしておくことが望まれます。自己認知・自己理解があって、はじめて、相手を理解し敬うことができるようになります。

理解し、受け入れ、共感する

クライアント(相手)の言葉の意味を聴くだけではなく、真の想いや感情を聴き取るためには、まずクライアント(相手)を心から理解しようと思うことが必要です。「自分はクライアント(相手)のことを知らない、心の変化を見逃しているかもしれない」と思うことが出発点です。そのうえで、『クライアント(相手)の存在そのものを心から受容する』ことが大切です。「彼(彼女)のことならわかっている」と思う傲慢な気持ちを持っていると、クライアント(相手)の心に起こっている微妙な変化を見逃してしまいます。

『受容する』ということは、クライアント(相手)の感情のすべてに自分が同意することではありません。仮に自分とクライアント(相手)の価値観が大きく異なっていても、その違いを乗り越えてクライアント(相手)が存在することを認め、その中で新しい関係性をつくっていくことが『受容』です。そして『受容』した後に、『共感』が大切です。

共感とは

共感について、心理学者のアルフレッド・アドラーは、「相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じること」と定義しています。つまり大事なことは、クライアント(相手)の目で見るとどう見えるのだろうか、クライアント(相手)の耳で聞くとどう聞こえるのだろうか、クライアント(相手)の心で感じるとどう感じるのだろうか。ということです。

クライアント(相手)に共感するというのは、クライアント(相手)との共通点を見つけることではありません。クライアント(相手)の話を聞いて一緒に笑ったり、泣いたりすることでもありません。クライアント(相手)が話したことについて、心から「そうだね」という気持ちを表し、クライアント(相手)と一緒にいると伝えることです。クライアント(相手)の気持ちに寄り添って、クライアント(相手)の存在を実感する必要があります。
ベンチでクライアント(相手)と二人で同じ方向に向かって座っているイメージです。

共感的理解と同情は違う

共感的理解とは、クライアント(相手)の心の基準でクライアント(相手)の言葉を理解するように聴くことです。同情とは異なります。

共感的理解も同情もクライアント(相手)に対する温かい心配りであり、援助的な心理作用です。しかし、共感的理解と同情はクライアント(相手)に対する理解の基準が異なります。共感的理解ではクライアント(相手)の心の基準でクライアント(相手)の言葉を理解し、同情は自分の心の基準でクライアント(相手)の言葉を理解しようとすることです。

大切なことはクライアントが理解されていると感じること

大切なことは、コーチが理解したと思うことではなく、クライアント(相手)が理解されていると感じることです。クライアント(相手)の話を聴いて「あなたの気持ち、わかります」という言い方をしますが、同じ体験をしていないかぎり、本当の意味でわかることは難しいでしょう。クライアント(相手)の気持ちに寄り添い、「辛いと感じているのですね」などと、確かめるように聴くことがポイントです。本当の意味で、共に通じ合っている感覚です。そのためには、「この人だったら信頼できる」「この人とは心が通い合っている気がする」と感じてもらえるような信頼関係を作ることが必要です。

相手が「辛いんだ」とか「落ち込んでいるんだ」という話をした時、多くの人は励まそうとし、アドバイスしようとして、「あまり深刻に考えない方がいいよ」などと言ってしまいがちです。自分では相手を勇気づけているつもりになっていますが、相手は「この人には言ってもムダなのだな」と感じて傷ついたりしていることが多いので注意が必要です。

子どもや部下が落ち込んでしまっている時にも、「グシグジ言っていないで、こうした方がいいに決まっているよ」と断定しがちです。しかしながら、こうした価値観の押し付けは避けた方がいいでしょう。

「辛いね。良かったら話を聴くよ。」
と「辛いね」という共感から始まるコミュニケーションが必要です。
価値観ややり方を押し付ければ、人は表面的には「そうですね」と言うかもしれません。
しかし内心ではそれに反発は、否定的な気持ちになっているものです。

人は結局のところ、自分自身が導き出した結論によってしか行動を起こしません。

メタ・コミュニケーション(2019/11/29)

メタ・コミュニケーションとは

メタ・コミュニケーションとは、「コミュニケーションについてのコミュニケーション」のことです。直訳すると、「言語を超えたコミュニケーション」とか、「上から距離を置いて見たコミュニケーション」といった意味があります。

私たちがコミュニケーションを行う時には、コミュニケーションの進め方についての合意がなければうまくいきません。会話の中で、今どのような場面にいるのかについての相互の了解があるからこそ会話が成り立ちます。それが分かるからこそ、発言の順番や量についても適切な判断ができます。分からない時には、確認する必要がありますし、状況に合わせて変更する必要があります。メタ・コミュニケーションは、このコミュニケーションの確認・調整のためのコミュニケーションをすることです。

例えば、対話の中に入ってきた第三者は、「何を話しているの?」と尋ねることによって、コミュニケーションに入ろうとする意図を伝えると共に、入り方についての指示を求めています。

バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーション

コミュニケーションには、バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションがあります。
バーバルコミュニケーションは,音声を用いたコミュニケーションです。
ノンバーバルコミュニケーションは音声によらない身振り手振り、ジェスチャなど身体を用いたコミュニケーションです。ノンバーバルコミュニケーションには,人同士の対面コミュニケーションにおいてコミュニケーションを円滑に行うためにコミュニケーションの内容や進行を調整するといった重要な機能である「メタ・コミュニケーション」があります。

会議などコミュニケーションへの参加者が多数の場合、司会者がこのメタ・コミュニケーションの機能を担います。司会者は、コミュニケーションの開始・中断・終了の合図、発言の順番の指示、テーマについての発言や沈黙の要求などを行います。そのような司会者の発言はすべてメタ・コミュニケーションです。
メタ・コミュニケーションは察知・推測、その場の雰囲気に気づく「あうんの呼吸」「 以心伝心」といった要素を含むと言われます。

コーチングにおけるメタ・コミュニケーション
~会話に違和感があるときに有効~

コーチは、相手の言葉だけでなく、「言葉の奥にある感情」、つまり言葉では言い表せない相手の感情や思考を読み取り、「相手が本当は何を訴えているのか」の本質を掴むことが求められます。

そこでコーチは、相手の反応や会話そのものに違和感のあるときに、会話を止めて元に戻してみるということをします。これが「メタ・コミュニケーション」です。コーチングのスキルの一つでもあります。

目的は、今交わしているコミュニケーションがお互いに対して利益を生み出しているかどうかを確認することにあります。会話が有効に機能しているかをチェックするために、会話を元に戻して考えてみます。ちょっと前まで交わしていた会話を振り返りながら、客観的に自分たちの交わしていたコミュニケーションを確認します。

例えば、コーチは次のような質問して、クライアント(相手)に確認したりします。
「ここまで話してみて、どんなことを感じていますか?」
「話したいことは話せていますか?」
「このままこの話題を続けていいですか?」

コーチも、メタ・コミュニケーションを使うことによって、自分の発言やコーチングに違和感や不安を持ったときに、それを確認することもできます。
例えば、次のような質問をします。
「話にくくないですか?」
「遠慮してないですか?」
「話を誘導してしまったように思うのですが、どうですか?」

このような質問をきっかけにして、ここまでのコーチング・セッションの流れを確認し、あらためて目標に向かってコーチングを進めることができます。また、クライアント(相手)に、今感じていることを話してもらったり、コーチが持っている考えや不安を投げかけたりすることによって、コーチとクライアントは、より深い関係を築くことにつながります。

メタ・コミュニケーションが効果的な場面

メタ・コミュニケーションはどのタイミングでも行うことができますが、コーチング・セッションでは、特に次のような場面で効果を発揮します。

  • 会話が堂々巡りになっていると感じたとき
  • 会話にズレを感じたとき
  • 具体的な行動を決めたとき

メタ・コミュニケーションを効果的に取り入れることで、客観的な視点を持てるようになります。

メタ・コミュニケーションとエバリュエーション(評価)の違い

メタ・コミュニケーションとエバリュエーションは、目的が異なります。
メタ・コミュニケーションは、今交わしている会話に焦点を当て、会話が有効に機能しているかを確認することが目的です。会話の途中でメタ・コミュニケーションをすることで、関係性を深めたり、目標に向けた会話を新たにつくり出したりすることができます。
一方、エバリュエーションは、コーチングによって何を達成したいのか、何を手に入れたいのかを確認・評価することが目的です。

エバリュエーションの質問例

「ここまで話してみてどうですか?」
「最初の目的は達成していますか?」

メタ・コミュニケーションの質問例

「今、話していて、どんなことを思っていますか?」
「自分が話していることについて、あなたはどのように感じていますか?」

コーチングのスキル「質問の力」(2019/11/15)

質問の質が、人生の質を決める

“質問の質が、人生の質を決める”とも言われます。私たちは無意識に一日何回も自分に質問をしています。「今日の天気はどうだろう?」「今日は何を着ていこうか?」「今日のお昼は何を食べようか?」などと、自分に問いかけをしています。人生はあなたが自分自身に問いかける“質問”の方向に引きずられます。どんな質問を自分に投げかけるか、どんな世界を見ているかにより、人生が変わります。

このように自分への問いかけを変えるだけでも人生を変えるきっかけになりますが、コーチのような第三者からの質問はより大きな気づきを生むことがあります。したがってコーチングでは、この質問の力を磨くことがとても大事になってきます。

コーチからの質問を受け、クライアントは自分の頭で考え、自ら答えを生み出していきます。質問に答えるためにはまず自分で考えなくてはならず、考えるプロセスで頭の中が整理され、棚卸しされていきます。

効果的な質問は、頭の中の漠然としていた考えをより具体的なものにしていくことに役立ち、視点を変えて新たな可能性を見出すことを助けます。また、質問によりゴール達成のための具体的手順を明らかにしていくため、行動を促すことにもつながります。

人と人とのコミュニケーションにおいて、質問には大きな力が秘められています。現在、質問力はひとつの能力として重要な時代になりました。今回は質問の目的や種類、具体的方法について考察していきます。

コーチが相手に質問する目的

コーチがクライアント(相手)に質問する目的は次のようなことにあります。通常の質問の目的は、質問する側の「情報収集」であり、質問する側のために行いますが、コーチングにおける質問は、相手、つまり質問される側の「気づき」を促す等相手のために行います。

(1) 視点を変える
見方を変えれば、可能性が広がります。

(2) 未来の絵を一緒に描く
ワクワクする未来は人を行動に駆り立てます。質問によって未来を描きます。

(3) モデルを探す
「サッカーの○○選手ならどうする?」というように、尊敬する人や憧れの人をイメージすることで、自分の目指す姿やありたい姿を考えるのに役立ちます。

(4) 具体的にする
抽象的なことは、人によって解釈が違うことがありますので、誤解を生じることがあります。そのために、具体的かつ明確にします。

(5) 気づき、ひらめきを促す
私たちは自分で考えだしたのが結局一番好きです。自分で考えたことは、行動や結果なつながりやすいです。

(6) 目標を設定する
ゴールのない目標は実現が遅くなります。マラソンで細かく目標タイムを決めて走っているのは、目の前に小さな目標達成が、大きな目標達成につながる道だからです。
質問によって、目標を明確にしていきます。

(7) アイデアを発展させる
質問することで新たなアイデアが生まれ発展します。会話が楽しくなります。

(8) 経験、知識を発掘する
誰だって上手くいったことはあるはずです。これまで培ってきた経験、知識、人脈などを掘り起こし、リソース(資源)を明確にします。

質問の種類

質問には、「オーブン・クエスチョン(開かれた質問)」と「クローズド・クエスチョン(閉ざされた質問)」があります。

オープン・クエスチョン

「オーブン・クエスチョン」とは、開かれた質問、答えに広がりのある質問と言われ、具体的には、「いつ(When)」「どこで(Where)」「だれ(Who)」「何(What)」「なぜ(Why)」「どうやって(How)」の5W1Hを使った質問のことです。これによって、相手から様々な考えを引き出すことができます。

What(何)
「何が問題なのですか」「必要なことは何ですか」など問題をはっきりさせるのに有効です。また、「それをするみとはあなたにとってどんな意味がありますか」など、相手に何かを考えさせ、事実を明らかにするのに役立ちます。

Why(なぜ)
理由を聞いたり説明を求めたりする時に使います。
しかしながら「なぜやらなかったのですか」と言われると責められていると感じたり、批判されていると誤解される場合がありますので、使い方には注意が必要です。

「How(どうやって)
「それはどうやったらいいと思いますか」というように、方法や対策を考えるのに有効です。

Wen(いつ)、Where(どこで)、Who(だれ)
「それはいつまでにできますか」など、確認や具体的な行動計画を立てるのに有効です。

クローズド・クエスチョン

クローズド・クエスチョンは、「はい(Yes)」か「いいえ(No)」で答えられる質問です。閉ざされた質問と言います。クローズド・クエスチョンは、相手の緊張をほぐし、お互いの気持ちを確認しながら話を展開できますので、相手との関係性が薄い初対面の人などとの話の切り出し方として有効です。
一方、詰問となりがちで、相手は言わされていると感じることがあるので注意が必要です。もし、相手がそう感じたら、納得しないで「ハイ」と言っているかもしれません。それに、クローズド・クエスチョンばかりですと、自分で考えない指示待ち人間となってしまう可能性があります。

チャンクダウンとチャンクアップ

チャンクとは、かたまりという意味です。チャンクダウンはかたまりをほぐす、チャンクアップというのは、かたまりをつくるということになります。チャンクダウンは具体化の質問、チャンクアップは抽象化の質問です。
最初に出されたアイデアは、漠然として抽象的であることが多いです。それを行動レベルに落とし込んでいくことが必要です。そのことをチャンクダウンと言います。かたまりをどんどん小さくしていって、「見てわかる、聞いてわかる、触れてわかる」という状態にします。反対に、「要するにどういうこと?」といったように、より大きなかたまりにして聞くこともあります。これをチャンクアップと言います。

3つの問い方

質問には、3つの問い方があります。
「相手の答えを引き出す質問」「相手に確認する質問」「相手の考えを深める質問」です。

1.相手の答えを引き出す質問

「答えは相手の中にある」というのが、コーチングの前提となる考え方の一つです。相手も気づいていない相手の能力や可能性を引き出すためには、相手が自由に答えられる状況をつくることが必要です。そのためには、オープン・クエスチョンが有効です。

2.相手に確認する質問

事実の確認や相手の意志を確認する場合の問い方です。この場合はクローズド・クエスチョンが有効です。クローズド・クエスチョンは、広がってしまった話題を絞り込み、相手に確認することができます。例えば、「やりたいことがたくさんある」という相手に対して、「その中で最初にやりたいことは何ですか」「AとBを比べて、どちらを優先させたいですか」というように、相手の意志を明確にすることができます。

3.相手の考えを深める質問

(1)未来を予測させる質問
「5年後はどうなっていたい?」など、相手のありたい姿、目指す姿を考えさせる質問です。

(2)リソースを引き出す質問
過去の経験や人脈など、自分が持っているもの、培ってきたものをリソース(資源)といいます。目に見えるもの以外に活用できるものはないか探すことができます。
「過去に同じような経験・体験したことを思い出してみてください。その時、どんなことをして乗り越えましたか?」「あなたの強みは何だと思いますか?」「誰かこのことについて相談できる人はいますか?」といった質問です。

(3)視点を変えさせる質問
第三者から見た自分や自分から見た自分への主体を変えた問いかけや時間軸、空間軸を変えた質問によって、相手の視点を変えて気づきを起こす質問です。

視点を変えることが新たな道をひらくことにつながります。例えば、上からではそれが見えないとしても、横に移動したり、下に回ったりしてみれば、その姿を確認することができるかもしれません。あるいは、その対象から遠ざかってみることで、全体像もより鮮明に見ることができたりします。
次のような質問がこれに当たります。
「もしあなたが、あなたの部下だったらどう思いますか?」
「もし時間が1日48時間あったら何をしたいですか?」
「もしなんの制約もなく、自由にできるとしたら、どんなことをしてみたいですか?」
「10年後のあなたは、今のあなたにどんな夢を追求してほしいと思っているでしよう?」

視点を移動する」質問(例)

移動の種類 立つべき視点 質問例
視点の主体を変える コーチには何が見えるか (フィードバックする)
対象者には何が見えるか 「相手はどう感じていると思いますか?」
「相手の人から見たら、この件はどのように映っていますか?」
第三者には何が見えるか 「あなたの親友なら、あなたにどのようなアドバイスをすると思いますか?」
「あなたが社長と仲が悪いことで、一番迷惑を被るのは誰ですか?」
「それをすることで、会社にはどのような影響がありますか?」
「社会的にはどのような意味がありますか?」
視点を事実に向ける 事実を整理する 何があったのか、話して頂けますか?
事実を確認する そう思ったのは、具体的にどのようなことがあったからですか?
視点を肯定に向ける セッションを始めてから、できていることは何ですか?
視点を細分化する まず、何から始めることができますか?
数値化の視点に立つ 理想の状態を100としたら、今はいくつですか?
視点の時間軸を変える 将来からの視点に立つ 「5年後にはどうなっていたいですか?」
「30年後の自分から今の自分に声をかけるとしたら、何て言いますか?」
「その問題をそのままにしておくと、将来的に何が起きますか?」
「ではいつ頃までに対処すべきでしょうか?」
「あなたが望む結果を得るために、今やらなければならないことは何ですか?」
「逆にやめた方がいい習慣はありますか?」
過去からの視点に立つ 「(仕事などが)うまくいった時はどうでしたか?」
「その問題はいつごろから起こっているのですか?」
「その問題が発生する前と、発生した後で大きく違う点は何でしょうか?」
視点を仮定に向ける 制約条件を無視した視点に立つ もし何の制約もなかったら、どうしたいですか?
制約条件を加えた視点に立つ もし明日で世界が終わるとしたら、どうしますか?
目標とする人物の視点に立つ もしあなたが坂本龍馬だとしたら、何をすると思いますか?
視点を外部のリソースに向ける あなたが助けられる人がいるとしたら、まずは誰が思い浮かびますか?
視野を広げる 視点を感情に向ける それをやっていて、どのような気持ちがしますか?
飛躍の視点を持つ あなたは、もっとできると思います。
目標を2倍にしてみませんか?
視点を原点に戻す セッションを通じて達成したいゴールを、もう一度確認してみませんか?
全体の視点を持つ 仕事以外では、どんなことが気がかりになっていますか?

(4)言葉の意味を明確にする質問
抽象的であいまいな言葉を明確にする質問です。例えば、相手が「コミュニケーションが悪い」と言った場合に、「あなたにとってのコミュニケーションって何ですか?」といった質問をすることです。

ラグビー日本代表 躍進の秘密~ダイバーシティとコーチング~(2019/10/24)

ラクビー・ワールドカップ(W杯)での日本代表チームの活躍にたくさんの感動と勇気を頂きました。

日本代表チーム躍進の秘密の一つに、“ダイバーシティ(多様性)”があると言われています。日本代表31名のうち、15名はオーストラリアやニュージーランド、南アフリカ、トンガなど外国人で占められています。

ラグビーで国籍要件が柔軟なのは、発祥の地である英国の植民地政策の歴史的経緯からきているようですが、海外出身のラグビー日本代表の選手たちは、日本代表として誇りを持ち、まさに「ワンチーム」となって戦っていました。

海外出身のラグビー日本代表選手たちは、選手として日本に滞在するうちに親身になってくれた日本人の優しさに触れ、愛着を感じ、日本代表としてプレーすることになったといいます。

他国の代表経験がないことが条件で、一度ある国の代表になると、二度と母国の代表になれないルールとなっているようです。その覚悟と決断は並大抵のことではないと思われます。

出身国や国籍にとらわれず、さまざまな選手たちが、「ワンチーム」となって戦う姿は感動的でした。国際化が進み、多くの人が国境を越えてボーダレスに移動することが当たり前の現代にあって、ラグビー日本代表のように「自ら国を選ぶ」というのは、ある意味で社会の理想型と言えるかもしれないなと感じました。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)

先日の日本経済新聞でも紹介されていましたが、企業経営や働き方を考える上で今、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という言葉が注目されているようです。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは、一人ひとりの異なる価値観や考え方(=ダイバーシティー:多様性)をお互いに尊重し、企業の成長や個人の幸せへとつなげていくこと(=インクルージョン:包摂)です(2019年10月18日付日本経済新聞より)。

近年は日本企業でも外国人労働者が増え、外国人労働者とのコミュニケーションや異文化理解がとても大きな課題になっています。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは、一人一人は「違う」ということを前提に、さまざまな仕組みや環境をつくっていくことであり、「違う」ことを前提に、コミュニケーションの取り方を考えていくことが大切です。

私たちはそれぞれ、国籍、性別、育ってきた環境などが異なるアイディンティを持っているという考え方のもとに、一人ひとりが安心して働ける環境をつくっていくことが必要です。

変化が加速し、消費者のニーズも多様化している今日、多様な価値観を活かせない組織では、新しいアイデアを生み出し、イノベーションを起こすことができなくなっています。

日本はどちらと言えば、島国ということもあり閉鎖社会の傾向が強いとも言われますが、ラグビー日本代表のように、新たな時代の組織や社会のあり方を考える必要があるかもしれませんね。

ダイバーシティが進む企業ほど経営指標が良好!?

国籍はもちろん性別を見ても、日本企業は男性の役員比率が高く、役員に占める女性比率は3.7%で、諸外国(米国16.9%、フランス30.0%など)と比べて女性の進出が遅れています(平成29年版男女共同参画白書)。

ダイバーシティは、 (1)グローバルな人材獲得力の強化、(2)リスク管理能力の向上、(3)取締役会の監督機能の向上、(4)イノベーション創出の促進、といった企業価値の向上に効果があるとも言われています。

経済産業省によると、女性役員比率の高い企業グループの売上高利益率(売上に占める利益の割合)ぱ、13.7%だったのに対し、低いグルーブは9.7%で、ダイバーシティが進む企業ほど経営指標も良く、株式市場での評価も高いようです。

ダイバーシティが進むと、価値観の違いからぶつかり合いも生まれます。しかしながら異なる価値観を戦わせ、お互いを尊重し、刺激し合うことで、思考の質が高まり、高いパフォーマンス発揮につながります。メンバーの学習意欲が高まり、新しい価値を創造する挑戦意欲が芽生えます。

価値観の調和と強いチームづくりにはコーチングが不可欠

異なる価値観を調和し、メンバーの力を最大限に発揮させ、強いチームをつくっていく時に、コーチングの考え方やスキルが不可欠です。

コーチングの前提となる考え方は、「人は皆人生の主人公である」「人は無限の可能性がある」「未来に必要なものは相手の中にある(答えは相手の中にある)」にあります。
相手を尊重し、相手のことを100%信じて受け止めることからすべてが始まります。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の時代は、まさにコーチングの時代とも言えます。
ラグビー日本代表の躍進を見れば、そこに答えがあります。

コーチングの『聴く』スキル~積極的傾聴法「アクティブリスニング」~(2019/10/20)

アクティブリスニングとは、米国の臨床心理学者カール・ロジャーズが提唱したカウンセリングやコーチングにおけるコミュニケーション技法のひとつで、相手の話を聴くときのあり方、姿勢、態度、聴き方の技術を指します。「積極的傾聴」と訳されています。相手の発する言葉だけでなく、その背後にある感情や気持ちまで積極的につかもうとする聴き方を言います。

聴く側の心構え

アクティブリスニングでは、聞く側の心構えが重要な役割を果たします。その心構えとして、カール・ロジャーズは「自己一致」「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」の3つをあげています。

「自己一致」とは

行動と発言が一致し、考え方に矛盾や混乱がなく、心が統一された状態を意味します。ここでは、聞き手が相手に対しても自分に対しても真摯な態度で、正直であろうとする心構えです。話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、分からないままにせず、真意を確認するようにします。

コーチングをしているとき、私たちはコーチという役割を演じているのではなく、私たち自身であること、私たちが自分の価値観や信念に気づいていてそれを受け入れていること、自分をよく見せようともせず等身大の自分としてそこにいることが求められます。私たちが感じていること(感情)、考えていること(思考)、表現していること(行動)に気づいていて、その三者が一致していることが大切です。

「無条件の肯定的配慮」とは

相手の年齢、性別、職業などを問わず、また相談の内容を問わず、受容的態度で接することです。話し手のありのままを受容し、話し手の言動や思考に対して否定や評価をしない姿勢です。

「共感的理解」とは

相手の心の基準で相手の言葉を理解することです。話し手の立場に立ち、話し手と同じ視点を持って物事を理解しようとする姿勢です。
相手の目で見るとどう見えるのだろうか。相手の耳で聞くとどう聞こえるのだろうか。相手の心で感じるとどう感じるのだろうか。「相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じる」ことと言えます。

コーチングにおいて、「聴く力」は最も重要で基本となるスキルです。目的は「クライアント(相手)に気持ちよくたくさん話してもらう」ことにあります。悩みや問題を抱えた人の多くは自分の気持ちをわかってほしいと思っています。まずは、ただ黙って聞いてほしいのです。そして一緒に感じてほしいのです。このときに求められるのが、アクティブリスニング(積極的傾聴)です。

◆「相手のために聴く」とは?

コーチの仕事は、ほとんどが相手のために「聴く」ことです。時として、相手のために「聴く」ことは、相手のために「話す」ことより効果があります。「聴く」ことは「話す」ことより、より人間としての本来の力を、発揮しなくてはできない能力かもしれません。そして、この「聞く」能力は、いつからでも開発することができます。

「聞く」を辞書で調べると、
音・声を耳に受ける
注意して耳を傾ける
話を情報として受け入れる
人の意見・要求などを了承して、受け入れる
尋ねる、問う(訊く)

ここまでの意味は、普段の日常会話での「聞く」のようです。
言い換えれば、情報収集、情報交換レベルの「聞く」です。このレベルの「聞く」では、まだ表面的な感じがします。

このほかに「聞く」ことの意味は・・・
感覚を働かせて識別する
当てて試してみる
釣りで、当たりの有無を確かめるために、仕掛けを引いたりして様子を見る
とあります。

これを言い換えてみると、
脳の五感をフルに研ぎ澄ませて、言葉以外の感情やモチベーション、真意や真実を全身で感じとって聞き分ける
「君の話からは、何かまだ気がかりが聞こえてくるよ」といった感じ取ったことを相手に返してあげる
「僕には、まだ何か不安げに聞こえるけど、本当のところはどうなんだい」といったように聞き手は、話し手が本当に言わんとしていることを、受け取っているかを確かめる
といった意味になりそうです。

このレベルの「聴く」は、二人の間に安心感や深い信頼感を生み出します。更には、相手は自分の言葉によって自己を知ることができます。この自分の中にある多くの考えや感情が言語化されて整理された時、人は自ずと答えを探すことができます。この、相手が自己発見をするサポートが、コーチの聴く目的です

「聴く」ときの阻害要因

私たちは人の話を聴いていると思っています。ところが私たちが人の話を聴くときに、阻害要因になっているものがあります。それは次のようなことです。

「自分が正しい」という考えに捕らわれる

この考えは「自分が正しく、相手は間違っている」ということを証明するようになります。そして、違った意見を聞き続けると、相手の意見が正しいことになる(相手に負ける)と思い始めるのです。

聴き手が大きな不安や不満を抱えている

相手を支援しようとする気持ちよりも、自分の感情に捕らわれてしまう。相手の話を聞く前に、まずは自分の心を安定させることが大切です。

相手の役に立つんだ!と頑張りすぎる

相手の「役に立つ」ことを強く望むと、良かれと思いから何とか相手を変えようとします。これは「自分が必要」と思われたい願望の裏返しでもあり、相手の幸福のための行為ではないのです。

「あるべき姿」に縛られている

聴き手の倫理観や道徳観、描く理想像に縛られ過ぎると無駄なエネルギーを消耗し、得るものも少なくなります。価値や理想は人それぞれに存在するので、まずは相手の価値観を尊重しましょう。

「聴く」にはレベル・深さがある

聞くには、「クライアント(相手)が言っていることを聞く」「クライアント(相手」の言わんとしていることを聞く」「クライアント(相手)の言っていないことまで聞く」「クライアント(相手)も気づいていないことを聞く」というように、聞くレベル・深さがあります。

                     

聴くレベル・深さ

深いレベルまで聴き取るには、アクティブリスニング(積極的傾聴)に重要なノンバーバルコミュニケーションと言われる言葉以外の表情や姿勢、視線、声のトーンなどにも注意が必要です。

コーチは「クライアント(相手)も気づいていないこと」を聞き取る力が求められます。そのためには五感を駆使し、クライアント(相手)の言葉以外のものも聞き取るようにします。
クライアント(相手)がどのような感情を持っているのか、本心で話しているのかどうかを感じ取るようにします。そのために、言葉と声の調子や体のしぐさとの食い違いを見分けます。
クライアント(相手)が発した表面的な言葉だけにとらわれず、クライアント(相手)の真の関心事を突き止めます。話の内容を聞かず、アンテナを貼って聞いてみます。聞こうと思ったことしか聞こえない、脳は関心事だけキャッチします。

聴き方の具体的方法

コーチは良き聴き手として、前述の聴く側の3つの心構えを持つことが基本ですが、相手に聴いてもらえていると感じてもらうための具体的な方法としては、次のようなものがあります。

(1)目線

目線において重要なポイントは「そらし過ぎず、合わせすぎない」ことです。視線を合わせることには、心理的な距離を縮める効果があり、信頼関係の構築に大きな効果を発揮します。

(2)ペーシング

クライアント(相手)にペースを合わせることです。話す速度や、声のスピード、トーン、呼吸、しぐさ、姿勢、表情等を合わせることにより、話しやすい雰囲気をつくることができます。

(3)相づちをうつ

クライアント(相手)の話に興味を示し、聴いていることの意思表示をします。
例)「うんうん」「なるほど」「へえ~」

(4)リフレイン(おうむ返し)

クライアント(相手)の言葉を繰り返します。自分の言ったことがクライアント(相手)に伝わっているという印象を与えることができます。
例)A「気分がよくないです」 B「気分がよくないのですね」

(5)うながし(接続詞を使って聴く)

クライアント(相手)に、よりたくさん話してもらうための方法です。
例)「それで?」「それから?」「他には?」

(6)話を最後まで聴く、待つ(沈黙する)

クライアント(相手)の言葉を途中でさえぎったりせず最後まで聴くようにします。またクライアント(相手)が考えているときには、クライアント(相手)に考えをまとめる時間を与え、沈黙して待つということが大切です。

(7)要約する、言い換える

クライアント(相手)の言ったことを要約したり、言い換えてみることで、クライアント(相手)の真意を理解するようにします。

対人関係のポイントは「聴く」にある

経営学者ピーター・ドラッカーはこう言っています。
「多くの人が、話し上手だから人との関係は得意だと思っている。対人関係のポイントが聴く力にあることを知らない」

話すことの主な目的は情報の伝達ですが、その背景に自分を分かってほしい、共感してほしいという思いがあります。発している言葉だけでなく、その背後にある「思い」を感じてほしいのです。
「きき方」次第で、相手の気持ちは大きく変わります。
相手の言葉を聞くだけでなく、言葉の背景にある心を聴くことが大切です。
「きき方」は人間的信頼にも大きく影響します。

「従業員に自分の思いが伝わっていない気がする」「部下のモチベーションが下がっている」「営業で結果を残せない」「人間関係がギスギスしている」「離職率が高い」こうした様々な経営課題も、この「聴く」力を身に付けることができれば、必ず良い方向に変化します。

エグゼクティブ・コーチングと中小企業の廃業問題 ~未来につながる廃業を考える~(2019/10/09)

先日、NHKスペシャルで「大廃業時代」と題したショッキングな番組が報道されました。

『廃業』と『倒産』は違う

『廃業』とは、後継者難や経営難など、理由を問わず自主的に事業を止めることを言います。

会社を廃業するには、事業を停止しなければなりませんが、会社の事業を停止しただけでは廃業したことにはならず、「休眠」や「休業」と呼ばれる状態です。

会社の事業を廃業とし、会社を閉鎖するには、会社を「解散」し、「清算」する必要があります。会社の解散や清算は、法律に定められた手続きによって行います。
会社の清算手続きが完了することを「清算結了」といいます。清算結了してはじめて、会社の法人格は消滅し、会社がなくなります。会社が清算結了し、法務局で清算結了登記を行うことによって、会社の登記簿(登記記録)も閉鎖されます。

一方、『倒産』とは、会社が支払不能の状態に陥り、会社の目的である経済活動ができなくなってしまうことを意味します。いわゆる経営破たんした状態が倒産ということになります。『廃業』とは、経営破たんしたかどうかに関係なく、事業を止めて会社を畳むことです。

会社を廃業するときには、株主総会の決議や官報への公告、法務局での登記、税務申告などの手続きが必要になります。会社法で官報に公告するには、2か月以上の期間をとることが求められています。したがって、廃業の手続きをして会社を閉鎖するまで、最短でも2か月はかかってしまうことになります。

今後1年間に31万社が廃業?

帝国データバンクの調査によると、全国140万社の廃業リスクを分析したところ、今後1年間に31万社が廃業するリスクがあるとしています。これが本当だとすると、およそ5社に1社が廃業してしまうことになります。

中小企業庁が発表した2019年版「中小企業白書」では、厚生労働省「雇用保険事業年報」を用いて開業・廃業の状況をまとめています。

2017年の日本の開業率は5.6%です。国際的にみると、開業率ではフランスで13.2%、イギリスで13.1%、ドイツでも6.7%となり、日本の開業率は低い水準であることがわかります。一方、日本における廃業率は3.5%。諸外国ではイギリスで12.2%、フランスで10.3%、ドイツで7.5%となっており、廃業率においても低い水準であることがわかります。

しかしながら、(株)東京商工リサーチの「休廃業・解散企業動向調査」を見てみると、2013年は休廃業・解散で34,800件から2018年には46,724件と増加しています。白書では「経営者の高齢化や後継者不足を背景に休廃業・解散企業は年々増加傾向にある」としています。一方、倒産件数では10,855件(2013年)から8,235件(2018年)と減少しています。国際的に比較して開業率も廃業率も低い水準となっていますが、今後も休廃業の増加が予測されます。

年間の休廃業・解散件数について、倒産件数と比較して確認すると、倒産件数は2008年をピークに減少傾向にあり、3年連続で1万件を下回っています。他方で、休廃業・解散件数は増加傾向にあり、2016年の休廃業・解散件数は過去最高となり、2000年と比較して2倍近い件数となりました。

東京商工リサーチ調べ

『廃業』の増加は、人口減少による地域経済の縮小による経営難や後継者難が背景にあると考えられます。中小企業の廃業は、雇用の場がなくなり、納税者もいなくなるということです。取引先の廃業による連鎖倒産にもつながり、金融機関にとっても貸し倒れリスクが増大し、地域経済、日本経済に深刻な影響を与えかねません。

NHKの同番組で、日本銀行の試算によると、地方銀行や信用金庫の半数以上が10年以内に赤字に転落し、このままでは、2025年に、GDP22兆円、雇用660万人が消失するとしています。

大廃業時代を生き抜くには?

番組では、「会社のおくりびと」と称するコンサルタントが円満な会社の終え方を指導していましたが、『廃業』は単に一中小企業の問題ではありません。雇用や地域経済への影響などを考えると、社会的・国家的な視点からも考えていく必要があります。
『廃業』した後の取引先や雇用問題、地域経済への影響を考慮しなければなりません。『廃業』後をどうするかを含めた支援が大切です。その点からも、これからは「M&A(企業の合併・買収」がとても重要な選択肢になってくるでしょう。

私も以前、公的な中小企業支援機関である東京信用保証協会で、中小企業の資金調達や再生支援に取り組んでいたことがあります。リーマンショックの時の『金融円滑化法(モラトリアム法)』で生き残った企業はあったものの、当時からこの負債はいつか大きな問題になると危惧していました。倒産・廃業に苦しむ多くの中小企業も目にしてきました。

廃業したくても廃業できない

最悪の事態に陥る前に余力のある段階で、会社を整理することは、その後の生活や再生を考えるととても大事なことです。しかしながら、多くの中小企業は、会社の事業そのものが生活基盤となっています。廃業には大きな決断が必要であり、生活していくことを考えると、いわゆる「廃業したくても廃業できない」といった状況にあるのも現実です。

企業の撤退・縮小は、経営者にとっても苦渋の選択であり、最も重い経営判断の一つです。長年続けてきた会社を閉じなければならないのは、経営者にとってこれ以上悲しいことはありません。生き甲斐を失い、命まで絶ってしまう経営者もいます。
一方、撤退の時期を誤ると致命傷となってしまい、大きな負債を抱えたまま倒産ということになりかねません。次の新たな再出発への道も難しくなってしまいます。経営者には決断と覚悟が求められます。

尚、『撤退・縮小』戦略を考えるうえで、マッキンゼー社の次の9象限事業マトリックスを使った戦略策定法が参考になります。

『企業参謀』(大前研一著)より抜粋加工

エグゼクティブコーチの役割

『廃業』は必ずしもマイナスばかりではありません。次の新しい未来に向かっての再出発でもあります。時代は大きく変化しており、新しい時代に対応した形への事業転換や質的転換が必要です。

エグゼクティブコーチは、『経営者・会社の成長』はもちろん、苦境にある中小企業の『撤退』(廃業)戦略、後継者問題、雇用問題、取引先や地域経済への影響など多角的な視点に立って、経営者をサポートできる存在です。経営者や従業員の新たな人生の再出発を支援する立場でもあります。

経営者と一緒になって経営者の真の想いを汲み取り、経営者に寄りそい「どうありたいか」「何がベストか」をサポートするエグゼクティブコーチの存在が益々重要になっています。

エグゼクティブ・コーチングのすべて(2019/09/23)

エグゼクティブ・コーチングとは、経営者や経営幹部などエグゼクティブに対してコーチングすることであり、これらのエグゼクティブに対してコーチングするコーチをエグゼクティブコーチと言います。

エグゼクティブ・コーチングが目指す姿は次の3点です。

エグゼクティブ・コーチングで目指す姿(目的)

1.最も人を幸せにする企業が、最も幸せになる「幸せ創造企業」をつくる

経営とは、「企業の社会的価値を向上させること」にあります。企業の活動を通して、社会に有益な商品やサービスを提供し、世の中に幸福をもたらすことです。言い換えれば、企業は、「人や社会を幸せにするために存在する」と言っていいでしょう。

「幸せ創造企業」が増えることにより、幸せの輪が広がり、より多くの人々が幸せになっていく,そんな社会を目指しています。

2.社員の力で最高のチームをつくる(エンパワーメント)

エンパワーメントとは、自律した社員が自ら考え自らの力で仕事を進めていける環境をつくろうとする取り組みです。社員の中で眠っている能力を引き出し、最大限に活用することを目指します。社員一人一人が仕事にも生活にも強い目的意識をもって取り組み、会社の仕組みや業務の進め方を改善し続ける原動力となります。会社の目指す方向性と自らの目標を高いレベルで融合させ、責任をもって行動するようになります。

3.エグゼクティブ自身の成長

エグゼクティブの皆さんに、より「すぐれた経営者」として成長して頂くことです。「すぐれた経営者」とは、第一級の経営プロフェッショナルとして、豊かな人間性と社会性を兼ね備えた経営者です。具体的には、次の3点を備えた経営者を目指します。

  • いかなる状況にあろうとも、適切な利益を確保し、企業を健全に維持・成長させる能力を持った経営者
  • 私利私欲を求めるのではなく、社員や社会全体の幸福に貢献することを真剣に考え、行動する経営者
  • 多くの人が自然に集まって、その人のリーダーシップに従って、それぞれがベストを尽くすような人間的魅力にあふれた経営者

エグゼクティブ・コーチングを始める前の確認事項(例)

  • 会社全体並びに部門別の業績推移とその予算対比など自社を取り巻く経営状況について、どのように認識しているか
  • 会社のビジョン、理念、ミッションは何か
  • 業界や競合他社の状況について、どのように認識しているか
  • 自社の強みや弱み、機会、脅威などについて、どのように認識しているか
  • 会社が抱える様々な課題とその対応策について、どのように考えているか
  • 役員および幹部社員をどのようにみているか
  • 役員、幹部、社員の人事評価システムとその運用はどうしているか
  • 社員のモチベーション、エンゲージメントはどうか
  • 社員の教育はどのように考えているか
  • 新製品開発、新規事業への取り組みや業務改善への取り組みはどうか

など

エグゼクティブ・コーチングの進め方

幹部社員に対して、エグゼクティブ・コーチングを進める場合(例)

  • 経営トップの方から会社の方向性、目指す人物像、幹部社員への期待などについてヒアリングさせて頂きます
  • コーチングの対象者となる幹部社員の皆さんに、現状の課題、コーチングで取り扱いたいテーマ、思考・行動特性などを記載して頂く「アセスメントシート」に記入して頂きます。
  • 対象者となる幹部社員と個別に面談し、コーチングの合意形成、コーチングで扱うテーマや達成したい目標などについてオリエンテーションをさせて頂きます。
  • 最終ゴール並びに経過目標の達成に向けて、セッション(会話)を進めていきます。
    セッションは通常6ヵ月~1年間にわたり継続して実施していきます。
    (期間、回数、時間等については、扱うテーマや各対象者の実情に応じて決めます)

エグゼクティブ・コーチングで取り扱うテーマ

エグゼクティブ・コーチングでは、会社経営に関することはもとより、経営者の個人的問題から社員、あるいは会社を取り巻く周囲の利害関係者に関することまで幅広いテーマを扱います。

多くの経営者は次のようなことで悩んでいます。これらの悩みに応えることができるのが、コーチングです。

経営者の悩み(例)

1.目の前の処理に追われ、重要課題への対応が遅れている

「やらなければいけないと思っているが、手がつけられていない」といった状況に陥ってしまっている。目の前の問題処理にばかり追われていると、将来の重要な課題への対応が遅れてしまい、タイミングを逃したり、危機的状況に陥ってしまいかねません。

2.仕事とプライベートのバランスが崩れ、健康状態に課題がある

経営者として自らの健康管理ができているかはとても重要です。仕事とプライベートとのバランスがとれているか、休暇は取れているか、家族関係はどうかなど、経営者の健康状態やプライベート面も重要なテーマになります。

3.相談できる相手がいない

日々様々な課題に追われているが、家族にも社員にも相談できず、自分の中に抱え込んでストレスになってしまっている。気楽に相談できる参謀的な役割の人がほしい。

4.理念やビジョンが形骸化して、社員に十分に浸透していない気がする

会社の理念やビジョンは掲げているものの形だけになってしまっていて、魂が入っていない、具体的な行動につながっていない。

5.せっかく社員を採用したのに、すぐに辞めてしまう。社員の定着率が悪い。

社員の離職率が高いというのは、「会社のビジョンがない」「この会社にいても成長する感じがしない」「上司が嫌だ」「社内の人間関係に我慢できない」「仕事がつまらない」
など様々な要因がありますが、人間関係に起因することが多い。

6.会社の方向性が見えない

変化の激しい今日、未来を見通すことが難しくなっています。現状維持では頭打ちになってしまう、なんとかしなければと思ってはいるがアイデアが浮かばない、ビジョンを再構築したい

7.自分で考えて行動する積極的・能動的な社員が少ない

「言われたことしかやらない」「自ら行動しようとしない」「自分で考えようとしない」
「一人一人オーナー意識を持って、自分で考え行動できる社員であってほしい」

8.任せられるリーダー、マネージャーが少ない

自分を補佐してくれるような経営感覚を持った右腕となるリーダーがいない。後継者となる人材がいない。部下を育てられるリーダー、マネージャーが不足している。

9.会社と社員が一体となった全社員経営を目指したい

社員一人一人がオーナー意識を持って働く全社員経営を目指したい。
会社の価値観と社員の価値観の調和を図り、ベクトル合わせをすることが必要です。

10. 急遽会社を引き継ぐことになり悩んでいる

先代の死や病気により、急遽会社を任せられることになったが、社員との関係性や会社経営のあり方について悩んでいる。

エグゼクティブ・コーチングの実際

エグゼクティブ・コーチングは、エグゼクティブに対してコーチングすることではありますが、会議運営のサポートから社員の教育まで、経営者の右腕となって会社全体の運営に関わることも多いのが現状です。

1.エグゼクティブとの個別コーチング

エグゼクティブと一対一で対面またはオンラインでコーチングを行います。
時間、回数、期間はテーマや状況によって異なります。1回90分、月1~2回、6ヵ月~1年契約の場合が多いですが、継続するケースが多く、10年以上という長期にわたる場合もあります。

2.エグゼクティブとのグループコーチング

経営幹部の皆さん4~6名を対象に、それぞれが抱えている課題についてグループでコーチングを行います。グループコーチングのメリットは他者の考え方・価値観に触れることができ、問題・課題の共有化につながります。

3.社員との個別orグループコーチング

経営者の考えや会社の目指す方向性と社員一人一人の考え、目指す方向、価値観との融合・調和を図ることを狙いとして、社員一人一人と面談し、経営者との橋渡しの役割を果たします。また社員間の人間関係改善や調和を目的にコーチングすることもあります。

4.会議運営サポート

せっかく会議の場がありながら、単なる報告会や指示命令の場に終わってしまっているケースが見られます。コーチングやファシリテーションの手法を使いながら効果的、効率的な会議運営をサポートします。

5.リーダー・マネージャーに対するコーチングマネジメント研修

後継者や次代を担うリーダー、マネージャーを対象に、リーダーとしてのあり方やコーチング型マネジメントについて研修します。

6.社内コーチの育成

社内へのコーチングの浸透を目指し、推進役となる社内コーチを育成します。

エグゼクティブ・コーチングの効果

コーチングへの誤解もあって、「自分にコーチなどいらない」と思っている方も多いですが、どんなに学んでも自分のことは意外と分からないのではないでしょうか?

日々、コーチとのやり取りの中で自分を磨いていく。これが飛躍的に、かつドラスチックに変えていく力になると信じています。

エグゼクティブコーチをつけることによって、自分の本心と向き合うことができ、精神的な安定感が生まれます。エグゼクティブコーチには守秘義務があり、社員や家族に話せないことも、安心して話すことができます。

激変する経営環境の中にあって、内向きに考えているだけでは生き残っていくことが難しい時代です。限られた期限の中で、様々な課題に即決していくには、ものごとを客観的かつ冷静に分析する能力が問われます。エグゼクティブコーチとの対話によって、その力はさらに増大します。

エグゼクティブコーチとの対話によって、一人では発見できなかった盲点に気づくことができます。エグゼクティブコーチとの対話によって、取り組むべき問題点や目標がより明確になり、目的により早く到達できるようになります。

エグゼクティブコーチは、経営者と社員の橋渡しの役割もします。組織内外の人間関係の改善とコミュニケーションの円滑化が図れます。スタッフや社員の隠れた才能を引き出す能力が身に付き、関係性も高まります。

将来の幹部候補にエクゼクティブコーチをつけることで、後継者の育成を図ることができ、人材の流出を防ぐことができます。

コーチングを全社員に実施することで、リーダーシップと人間的な魅力に溢れたリーダーやマネージャーが育ちます。そして一人一人が自立したオーナー意識を持った全員経営の実現ができます。

将来に対する危機意識、リスクマネジメントの観点からだけでなく、思考の枠を広げるうえでもエグゼクティブコーチをつけてみることをお勧めします。

優れたアスリートには皆コーチが付いているように、経営者一人一人にパートナーとなるコーチ(エグゼクティブコーチ)がいれば、安心して経営に専念することができます。

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