心理学とコーチング ~好きと嫌いは表裏一体?「対人魅力」~(2020/03/23)

今回は、「対人魅力」についてです。
心理学としてのとらえ方にも幅があるのですが、「魅力」というワードを狭義に解釈して「他者(個人に限りません)から受ける好意や尊敬といった肯定的な態度の大きさ」という定義がわかりやすいと思います。この肯定的態度に加え「どうして嫌われるのか」という否定的態度も対象としてとらえる「対人魅力」もあります。好きと嫌いは表裏一体であるともいえます。

親密な関係は、身近な人から始まる。

友情や恋愛は、まずは身近な人との出会いから始まるのが通常です。高校、大学のサークルや教室で、そして職場といった日常近くで接する人との関わりから育まれていきます。これを「近接性」と呼びますが、会うために費やすエネルギーが最小であり、自身が働きかけをしない受動的態度でも意図しない接触が可能となる、というメリットがあります。よく「どうして彼女(彼氏)がいないの?」と訊かれて、「だって女性ばかり(男性ばかり)の環境だから無理、出会うチャンスがないから」という会話がいたるところで交わされています。

関係性はコミュニケーションから生まれます。なお以心伝心は、関係性が構築された以降で可能な間柄(しかもかなり高度な)ですから。最初からはありえません。
「近接性」によって自然とコミュニケーションが増え、相互関係が促進され、さらに接触頻度が増加することで肯定的態度が形成される「単純接触効果」が指摘されています。

さて「近接性」→ 肯定的態度が生じる、としましたが、実は単純ではありません。
・友人との距離 → 近づくと好ましく感じられる。
・見知らぬ他人 → 接近は回避したい。
さらに「接近行動はすでに持っている感情を増幅させる効果がある」とされています。
・好意を抱いている人との接近 → ますます好きになる。
・嫌いな人に接近されると → ますます嫌いになる。
なかなか難しいところです。

人はどのような人を好ましいと感じ選択するのか?

ところで身近な環境がすべて親密な関係性につながっていくのか? 決してそうではないことを我々は知っています。つまり「選り好み」という感情が生じるためです。では出会いの段階(まだ相手の全体像は把握できていない)で、「人はどのような人を好ましいと感じ選択するのか」をひも解いてみましょう。

1.身体的魅力

ランディとシーガルによる実験から導き出された内容で「身体的魅力を有した人は、好ましいパーソナリティ特性を持ち、才能があると見られている」というものです。『心理学とコーチング』コラムの最初の対人認知で、「ステレオタイプ的認知」「後光効果」を取り上げましたが、まさに典型的事例です。

ただし、面白いのは、身体的魅力は“出会いの一瞬”に最大の効果が発揮されますが、その後さまざまな情報が入ってくることで効果は薄れていきます。

最初に好きだと感じた場合と、そうでない場合のその後の好悪度を調査すると、前者がむしろ嫌いになる率が高まるのに対して、最初は特別な感情がない場合の方がむしろ好きになっていく、つまり期待していなかった分、好ましい情報をキャッチすると好感情が芽生えていく、ということです。

前者は後光効果により相手に対し理想像を投影してしまい、理想と現実のギャップを感じ幻滅してしまう(自分勝手な評価ですから、その幻滅要因は決して身体的魅力の高い相手のせいとは必ずしもいえませんよね)。美人が得ばかりしている、わけではないのかもしれません。

2.類似性

関係性の第一歩である「近接性」の次のステップが「類似性」です。特に態度や価値の類似性が重要だとされています。意見や嗜好性が似通っていると、衝突することが少なくなり、そのためコミュニケーションが円滑に、かつ多頻度に行われるために関係性がさらに深まっていきます。

また、フェスティンガーの「社会的比較過程理論」によると、人は自分の意見や信念の正しさを他者と比べるが、類似した他者の存在は自分の考えの正しさを裏付ける効果をもたらすので好ましく感じる、と説明しています。

3.交換理論

誰と積極的にコミュニケーションしていくのか、という選択の過程を説明する理論で、他者との相互作用においてコストより報酬が高い人が選択される、という結論が導き出されています。報酬は金銭だけでなく、相手からの知識、自尊心が高まる、落ち込んだときにやさしくなぐさめてくれる、などです。コストは関係維持のための物質的(金銭など)、精神的な努力が該当しますが、組み合わせはさまざまですので、報酬が高いと感じるその報酬の中身は、まさに人それぞれですね。

4.欲求の相補性

長く続いているカップルがすべて似た者同士なのか? 決してそうではないことに気づきます。「割れ鍋に綴じ蓋」といわれるように、自分にないものを相手に求め、それによって関係性が安定する場合です。支配欲が強くおしゃべりな妻の夫が無口でおとなしいタイプ、という組み合わせはよく見聞きしますよね。私はついつい「サッチーと野村監督」を思い浮かべます。

「一髪・二風・三器量」とは?

「人は外見で評価すべきではなく内面が大切なのだ」というフレーズは万人が認めるところですが、それを我田引水にとらえ「外面は関係ない、内面を磨けばよい」と身なりにかまわないで自分ファーストに暮らしている人も少なくないようです。

身体的魅力が第一印象を形成する(してしまう)のはある意味自然なことで、目くじらを立てることではない、というのが私のスタンスです。「一髪・二風・三器量(いちかみにふうさんきりょう)」という言葉を化粧品会社の人から聴いたことがあります。

人が相手を見て印象に残る順番とのことですが、まずは髪形。しっかり手入れがされているか、ボサボサは論外。次いでファッション。最後が顔かたち。極端に言えば美人かどうかはそれほど気にする必要はない、ということですね。もっとも化粧品会社ですから、メイクアップで美しくみせることは可能、ということなのでしょう。

いずれにしても私たちが戒めなければならないのは、ステレオタイプ的思考であり、思い込みにとらわれてしまうことです。物事は実に多様であり多彩です。まさにコーチングの立脚点ですね。

新型コロナウイルスとパニック(2020/03/16)

新型コロナウイルスは、3月11日にWHOのテドロス・アダムス事務局長により「パンデミックである」との宣言がなされました。あらゆるメディアからシャワーのように情報が提供される中、私も、自分自身はどう対応していけばよいのかを考え、そして可能な範囲でのアクションを起こしている日々です。
今回は、この新型コロナウイルスを通じて、私自身が感じている「心理学」との関係について、取り上げてみようと思います。

ドラッグストアの前で、マスクの購入をめぐって取っ組み合いの喧嘩が起こったことが報道されています。そしてインターネットで「新型コロナウイルス パニック」という文字を入力すると、夥しい情報がヒットします。テレビ、新聞などのマスコミ、そしてソーシャルメディアからもパニックの様相が伝わってきます。では実際にパニックなのか(起こり始めているのか?)、ということなのですが、心理学的知見を含めて、このパニック・集団心理について、考えてみましょう。

パニックの定義とは?

「パニック」の定義にはさまざまありますが、インターネットで検索すると、内的ストレスによる発作であるパニック障害が上位に登場します。おそらく過去10年以前は、「パニック」→恐慌、が上位であったと想像しますが、今日では、社会現象からの起因ではない「個々人のストレス」が注目されるようになった、ということでしょう。このことも社会現象といえなくもないのですが、社会心理学の「生命や財産の脅威を認知した多数の人々による集合的な逃走行動とそれに伴う社会的混乱」という定義にフォーカスすることにします。

オーソン・ウェルズの『火星からの侵入』で注目されたパニックとは?

この『火星からの侵入』は、まだTVが登場していない1938年のラジオドラマです。この番組によってパニックが引き起こされた、として全米中の話題となりました。この現象は、プリンストン大学のキャントリルの研究によって、1940年に『火星からの侵入―パニックの心理学に関する研究』として出版されています。

ドラマの内容は、天気予報や音楽番組という体裁をとりながら、合間に臨時ニュースを挟み「火星人が地球に来襲し米国の中心部を攻めている」という実況中継的なナレーションを何度も入れて、リスナーの不安を高めていく、という凝ったストーリー展開でした。
放送されると、ドラマにも関わらず、多くの人々が現実のニュースであると誤解し、混乱が生じています。もちろんフィクションであり、そのことを番組の中で頻繁に流した、と言われていますが、当時はTVという、同時に映像として事実を確認できる手段がなかったことが、不安が高まった主たる要因とされています。
キャントリルの分析結果に対して、その内容に疑問を呈する研究が発表され、論争を招いたことでもこの『火星からの侵入』は話題を集めています。
キャントリルは、番組を事実と誤認したリスナーの特徴を分析しています。私も確かだなぁ、と理解したのは、番組を途中から聴いたリスナーが中心であった、ということです。番組の途中でフィクションであることのナレーションを頻繁に入れたとされていますが、当時「ザッピング」というスタイルがあったかどうかは別として、そのナレーションを耳にしていない人にとっては、「まさか火星人が…」と思いつつも、「ひょっとして…」と信じてしまうことが想像されます。当時は戦時であり、音楽番組の途中で「臨時ニュース」をシリアスに伝えることが一般的であったことも、その「信じる」を補強したと分析されています。

災害放送でアナウンサーが繰り返し同じ言葉を伝える理由は?

昨年は台風19号に代表される大災害に見舞われました。その際、特にNHKはその使命もあって、長時間の帯で被害の推移を報道し続けます。その中でアナウンサーは、時間をそれほど置くことなく「同じコメント」を繰り返します。ずっと番組を視聴し続けていると、「くどいなぁ~ さっきから同じことばかり繰り返して…」と感じるのですが、それは、チャンネルを頻繁に変える視聴者を前提として放映しているからです。
キャントリルは、与えられた(取得した)情報が真実なのかどうかついての判断という観点で、リスナーを4つに分類しています。

  1. 番組を聴くなかで自らが「事実ではないドラマ」だと判断した人。
  2. 番組以外の外部情報を得て「事実ではないドラマ」だと判断した人。
  3. 外部情報の取得を試みたが、それがうまく機能せず「事実である」と信じてしまった人。
  4. そもそも外部情報の取得を思いつかず、一貫して「事実である」と信じた人。

自分がどのタイプに属するのか、思わず考えてしまいますが、キャントリルは、それぞれのタイプの人がどのように属性であるのか…について発表しています。それについては今日「?」がつくものもありそうなので、コメントは控えることにします。

パニックを生み出すのはマスコミの報道姿勢?

未知なるもの、それが新型コロナウイルスのように、生命の脅威だと“される”ものが身近に迫っていると“感じる”と、人は不安にさいなまれます。
私があえて、“される”と“感じる”にカッコを付したのは理由があります。つまり、見聞(聴)きする情報を得て、その情報が確かである、と受けとめることによって「脅威に感じ」たり、あるいは「それほど恐れることでもない」、と理解するという思考の流れに着目したいからです。
つまり「確かである」と判断してしまうその情報がフェイクであった場合、それによって導き出される態度の「脅威」あるいは「恐れる必要なし」の選択が、結果的に失敗となってしまうからです。

実は『火星からの侵入』が「パニックであった」、として全米に広がったのは、事件直後にマスコミがセンセーショナルに報道したことが最大の要因だとされています。
キャントリルも定義づけられたパニックであったとしていますが、定義に含まれる「集合的な逃走行動」が実際に起こったのか、という点については不確かであるとの指摘がされています。つまり「パニックの定義通りのことが実際に起こった」と全米中が認識したのは、マスコミがキャッチーなテーマであるといきり立ち、「特ダネ」を意識して大大的に報道したその姿勢にあった、というわけです。
ニュース報道は、客観的な正しさが求められます。日本における5大全国紙(3とも4とも表現されることがありますが)は、そのことを心がけています(とされています)が、「特ダネ」を狙う、というのは共有した価値観であり「裏を取ったはずが誤りであった」ということは、かなりの頻度で発生し「訂正文」が後日発表されることはたびたびです。

「情報リテラシー」を高めるよいチャンスだと受けとめよう!

新型コロナウイルスは前提として「未知なる部分」が多々存在しており、このことで我々は不安になり、すぐにでも「本当のこと」を知りたくて情報に敏感になっています。マスコミ側としても「正しい」ことを伝えようと必死になり、権威とされる人物に見解を求め、また日本だけでなく世界中で起こっている現象を「正しく」伝えようと日々格闘しています。だからこそ、真実だと“想定される情報”をいち早く提供しようとし、後日それが誤っていたことが判明する、というケースが多頻度に検証されることでしょう。
現在はこのような未曾有な状況であり、私たちは冷静を心がけ、氾濫する情報に落ち着いて対処することが求められるのです。
ネット上にあふれかえるパニックは、実は本来の意味の「パニック」ではなく、不安を抱いている状況だからこそ、センセーショナルな表現を使いたがる「空気」の存在によって拡散している、と私は解釈しています。
よって、「新型コロナウイルスは私たちの情報リテラシーを高めるチャンスとして登場したミッション」と受けとめましょう。このスタンスをもつことで、新型コロナウイルスも別の色彩を帯びてくるような気がしています。

(日向 薫)

一目でわかる「新型コロナウイルス感染症」に伴う資金繰り支援制度について(2020/03/10)

経済産業省は、新型コロナウイルス感染症の発生に伴い、同感染症の影響を受ける業種に属する中小企業者の業況が悪化していることを踏まえ、中小企業者の資金繰り支援措置を講じました。

制度の利用にあたっては、信用保証協会の『経営安定関連保証(セーフティネット保証)制度』と日本政策金融公庫か行っている「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付制度) 」があります。
分かりやすいよう対比してみましたので、ご活用ください。

なお、信用保証協会とは、中小企業の皆様が金融機関から資金を借り入れる際に公的な立場で保証を行うことで資金繰り円滑化を支援している公的な機関です。全国に51の信用保証協会があります。
一般の保証限度額は、普通保証が2億円、無担保保証が8,000万円です。
以下の図は東京信用保証協会の場合です。自治体との関係は各信用保証協会によって異なります。

今回、経済産業省が資金繰り支援として実施したのが、「経営安定関連保証(セーフティネット保証)」と呼ばれるものです。

経営安定関連保証(セーフティネット保証)」は、取引先が法的整理の申請をしたり、営んでいる事業が国の指定する業種となっていたり、台風などの災害に遭うなどの要因によって経営に支障が生じている中小企業・小規模事業者向けの保証制度です。

1号~8号の8種類があり、今回4号に「新型コロナウイルス感染症」が指定され、5号において対象業種の拡大が行われたものです。
セーフティネット保証を利用するには、市(区)町村の担当窓口で認定を受ける必要があります。
これ以外に、各都道府県や市区町村でも独自の制度を設けています。

取扱窓口 全国の信用保証協会 日本政策金融公庫
対象制度 セーフティネット
保証制度4号
セーフティネット
保証制度5号
経営環境変化対応資金
(セーフティネット貸付)
制度の概要 突発的災害(自然災害等)の発生に起因して売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置。(今回「新型コロナウィルス感染症」を指定)売上高等が減少している中小企業・小規模事業者の資金繰り支援措置として、信用保証協会が一般保証とは別枠で融資額の100%を保証する制度 全国的に業況の悪化している業種に属することにより、経営の安定に支障を生じている中小企業者への資金供給 の円滑化を図るため、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で80%保証を行う制度。今回、旅館・ホテル、食堂、レストラン、フィットネスクラブなど40業種を追加指定。 社会的、経済的環境の変化などの外的要因により、一 時的に売上の減少など業況悪化を来しているが、中期的には、その業績が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者の経営基盤の強化を支援する融資制度。
要件 災害等の発生に起因して、その事業に係る当該災害等の影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、完成工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること。 指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少等。※時限的な運用緩和として、2月以降直近3ヶ月の売上高が算出可能となるまでは、直近の売上高等の減少と 売上高見込みを含む3ヶ月間の売上高等の減少でも可。 最近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比し5%以上減少しており、かつ、今後も売上減少が見込まれる方等(今回柔軟に対応)
認定書が必要 売上高等の減少について市区町村長の認定が必要 売上高等の減少について市区町村長の認定が必要  
対象資金 経営安定資金 経営安定資金 運転資金、設備資金
保証割合 100%保証 80%保証  
保証限度額(融資限度) 一般保証とは別枠で2億8,000万円 一般保証とは別枠で2億8,000万円 中小事業 7.2億円、国民事業4,800万円
心理学とコーチング ~態度 その3 態度の形成要因~(2020/03/09)

前回は「態度の形成」について「古典的条件付け」「オペラント条件付け」の2つの理論を取り上げ解説しました。今回のコラムは「態度のまとめ」として、「態度の形成要因」についての2つの視点を紹介します。

オルポートによる態度形成要因

1.統合

さまざまな経験が累積的に統合化、体制化されて態度が形成される。
オルポートは「態度は1回の経験で形成されるわけではない」と言います。私たちの実感を踏まえると、“癖”は突然始まった、というより、積み重ねの行動を経て固定化してしまったように感じます。

2.分化

最初は大まかで未分化かつ非特殊的な態度は、経験が増加することで対象態度の相違に対応し次第に個別化、分化、特殊化していく。
上記の「統合」される個々の態度は経験を通じて分化していったものだ、と説明します。

3.衝撃

一方で強烈な情緒的ショックの場合は1回の経験で態度が形成される。
「統合」に当てはまらない態度形成もあるとしています。それは特定の経験があまりにも強烈すぎて情緒的ショックとして刻印されてしまい、固有な態度となって表れる場合です。心的外傷が典型です。トラウマ(Psychological Trauma)という英語表現の方が一般化しました。そのシーンが折に触れてよみがえり(フラッシュバック)、それが続くことでPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)という疾患にまで至ってしまう態度形成も指摘されています。

4.採用

重要な他者(父母など濃い関係)の態度をそのまま模倣し、採用することで態度が形成される。
ミラーリングというキーワードがあります。これは相手の行動やしぐさ、言動などを、そのまま真似てしまうことで、鏡(ミラー)に写るように、という意味合いを持っています。パートナーとの付き合いが始まりしばらくすると、友人から「今の態度、カレシにそっくりー!」と指摘される、という場合ですね。

クレッチ、クラッチフィールドによる態度形成要因

1.欲求の充足度合

自分の欲求を充足させてくれる、目標達成の手段となる、という自分にプラスとなる相手にはOKな態度をとるが、そうでない場合はNOの態度をとる。
本人の自覚の程度は別として、対象を合理的にとらえる視点での態度です。この態度形成が当てはまるか否かを自問自答した場合、「自分はそのようなタイプではない」と自我が受けとめている人が、他者から「まさにそういうタイプである」と見られていることはありそうですね。

2.情報量

態度の対象に関する直接的、または間接な情報に接することで態度が形成されていく。それは情報量により変化していく。
生きていく過程において外部の情報、刺激をまったく受けない、ということはありえないので、当該指摘は「あたりまえのこと」と理解できます。ポイントは「情報量」です。ただし特定の情報につき同じ情報量を受けた複数の人間がすべて同じ態度になるか、というとそのようなことはなく、個々人のパーソナリティなど他の因子も加わってきます。

3.所属集団

所属集団に影響される。
態度形成の対象は個人のみでなく所属している集団の影響を強く受けます。大学時代は似た者同士が、一方は銀行に、他方は商社に就職することによって、大きく異なる態度、雰囲気に変わってしまうというのは実感するところです。所属している集団のフィロソフィー、価値観、暗黙の集団規範を受容する過程で、固有の態度が形成されていきます。

4.パーソナリティによる多様性

同じ集団に属していても、本人のパーソナリティにより、集団への帰属意識や情報を処理する過程に相違があるので、個々人によって形成される態度には差異が見られ多種多様となる。2番目の「情報」の後段で “個々人のパーソナリティなどの他の因子”と説明したように、4つ目の「多様性」は、1~3までの一般的指摘(公約数として成立する)には例外があり、そのことを補完する意味合いがありそうです。

私はこの「多様性」というワードがとても好きです。近年では「ダイバーシティ」と英語での表記も広がっています。心理学における各理論の提唱は、人に関わるそれぞれの現象をパターンとしてとらえグルーピングしていくアプローチです。ところが…

世界中の賢人が解明しようとして、それでもわからないのが「人の心」。

「人を理解するのは実に厄介ごとである。常にモヤモヤ感を覚えてしまう。それを少しでも腑に落ちるよう助けてくれるのが心理学である」
これは私の解釈ですが、それでも全容を解明できないのが「人の心」であり、だからこそ心理学者をはじめ、あらゆる分野の賢人(そこには小説家も哲学者も、そして市井のお父さんお母さんなどあらゆる人たちが含まれます)が解明しようと悪戦苦闘している…これこそがリアルな日常の営みですよね。

(日向 薫)

心理学とコーチング ~態度 その2 条件付け理論~(2020/03/03)

前回は「態度の機能」を説明しました。今回は「態度はどのようにして形成されるのか?」を取り上げます。その態度について心理学で必ず学ぶのが「条件付け理論」です。心理学の理論の多くは海外で誕生しオーソライズされてきました。したがってそのネーミングは日本語に訳されたものが多く、かつ日常使う平易なことばを避けるきらいがあるので、わかりにくい日本語となっていますが、最初に紹介する理論は、その理論を導き出した実験内容がとてもわかりやすく「理論提唱者+実験動物」として世界に広がりました。それが「パブロフの犬」です。パブロフは1904年にノーベル生理学賞・医学賞を受賞しています。

条件付け理論は「パブロフの犬」を起源に発展していきます。

犬に餌を与える都度特定の音を鳴らして聞かせる。それを繰り返していくと、餌を与えなくてもその音を聞いただけで唾液の分泌を始めてしまう、という内容です。この実験を端緒として「条件付けの理論」が発展していくことになるので「古典的条件付け理論」と呼ばれています。
余談ですが、実験を行う場合には仮説を立てて臨みます。つまり実験とは「結果を見通した上でそこに至る道筋を設計し実行すること」と定義できるでしょう。面白いことにパブロフは別の目的で犬の唾液成分を研究していた際に、このことを偶然発見したと言われています。大発見が偶然(別の目的の実験時)の産物、インスピレーションから生まれることはつと知られる話です。

もう一つの代表的条件付け理論に「オペラント条件付け」があります。

さて、条件付けにはもう一つ別の理論があります。スキナーによる実験の「レバー押すと餌が出て来る箱」から導き出されました。マウスが偶然にレバーを押すと餌が出てきます。するとネズミのレバーを押すまでの時間が短くなってくる、つまり餌=ご褒美(報酬)というフィードバックによって、レバーを押すという技能を学習したといえるのです。これはオペラント条件付けと言われます。二つの条件付けを整理しましょう。

<古典的条件付け>

食べ物と唾液はセットです(無条件反応)。自分の意志でコントロールされているわけではなく生理的なものです。ところが、特定の音(中性刺激)によって、本来結びつかない唾液が出るという反応、つまり、特定の刺激(経験)が重なる、あるいは強い刺激が与えられると、一見説明がつかない態度が形成されてしまうことをこの理論は示しています。
私の場合なのですが、なぜか病院で血圧を測ると普段と比べ必ず高くなります。数年前の人間ドックでそのときたまたまだと思うのですが、高い血圧になったのです。「あれっ?」という感覚が残り、その後病院で測ると高くなることが繰り返され、今では「いやだなぁ、絶対高く出るものなぁ」と病院に行く前から鼓動の高鳴りが自覚されます。これは「白衣高血圧」と呼ばれているようで意外に多くの人が経験しており安堵していますが、まさに自分のコントロールを超えたところの不随意反応です。

<オペラント条件付け>

オペラントは作動を意味するoperateの造語です。スキナーが名づけ親ですが、道具的条件付けとも言われます。不随意反応とは異なり、コントロール可能な随意反応です。
血圧を下げたいという動機に対して、医者に「塩分とお酒を控えると血圧は下がりますよ」と言われて、意志の力でもってそれを実行します。すると血圧が下がってきた。まさに達成感です。そして以前は大好物であったインスタントラーメンのスープを飲まなくなることにストレスを感じなくなった(残念ながら私の場合は意志の力が弱く実行できておりませんが)。このケースは、血圧が下がるという報酬がスープを飲むことにより与えられる快刺激(別の報酬)を凌駕した、ということですね。

条件付け理論を背景として精神療法の「行動療法」が開発されています。

この2つの条件付け理論は、精神療法の一分野である「行動療法」につながっています。クライアントが抱えている行動上の問題点(恐怖症や習癖)に対して、カウンセラー(精神科医、あるいは臨床心理士などの専門家)が行動面において、恐怖症の場合その対象に少しずつ近づいていきステップを踏んで慣れさせていく、という手法です。具体的ケースとして高所恐怖を取り上げましょう。

まずは10cmの台に上ってもらいます。「ええっ?10センチからですか?」と驚かないでください。思考と異なり恐怖症の人に表れる精神的な感覚、あるいは身体的症状は、健常な人は体験できていないので、理解しづらいものです。高所恐怖が強く出てしまっている人は、ほんの10センチでも「高い」という意識にとらわれ、鼓動が高まるということもあるのです。カウンセラーは知的な理解に基づいて、その人に寄り添い、適切なことばをかけながらその恐怖を解いていきます。そして次に20cm、30cm…1m、というように徐々に高くしても動悸がしない感覚をクライエントが得ることで自信が生まれ、恐怖症が克服されていく、という療法です。

言葉で説明するのは簡単ですが、症状が治まるまでの期間が順調な場合でも数か月を要するのが一般的です。また恐怖を覚える原因がクライアント本人の無意識層に隠されているケースなど、行動療法だけでは治癒に向かわないこともあります。なかなか奥の深い世界ですね。

コーチングのメイン対象者は特定分野でのパフォーマンス向上を目指す人々。

高所恐怖症を事例に取り上げましたが、他方、コーチングは特定の分野においてパフォーマンスの向上を目指す人たちが中心になるので、精神療法とは異なります。もっとも治療を必要とする行動には至らないまでも、人々が態度を形成するその背景に、古典的条件付け、あるいはオペラント的条件付けなど、外部刺激と反応にパターンが存在することを理解しておくことは、実際のコーチングセッションにおいても役立ちます。次回も引き続き心理学的アプローチで「態度(その3です)」を解説してまいりましょう。

(日向 薫)

心理学とコーチング ~態度 その1 態度の機能~(2020/02/25)

2回にわたって心理学における「対人認知」を紹介してきましたが、今回は「態度」について取り上げたいと思います。

対人認知という4文字熟語はまさに心理学用語であり、一般的な会話の中では使用しないことばだと思います。一方、今回取り上げる「態度」は、日常頻繁に用いることばです。心理学での「態度」はこの意味合いとは異なりますので、まずはその定義を押さえておきましょう。

「パーソナリティの一側面を意味し、いろいろな対象に対して一貫した一定の反応傾向を示す言葉として用いられている。つまり、行動発生のメカニズムの一端がこの態度に求められている。」

やや難解な日本語ですが、ポイントは“反応傾向”です。つまり外部から観察できる“身体の態度”ではなく、対象に対して何らかの反応や行動を決定するための内面的な準備状態のことを指します。つまり精神的な傾向をひもとくもの、と理解してください。具体的に表れる身体の態度について、“なぜそのような態度を示すのか”を探るアプローチといえるでしょう。

心理学者のカッツは態度の機能として以下の4つを挙げています。

態度の4機能

1.適応機能(道具的機能、功利主義的機能とも表現されます)
一般に人は外的環境から報酬を最大に、罰を最小にしたいという欲求がある。外的環境に適応的になるという機能。

2.知識機能(知的集約機能)
外的環境を理解し意味のあるものにしようとする欲求がある。認知的一貫性を保ちたいという傾向。

3.価値表出機能(自己表出機能)
自分が重要視している価値を表したい、自分を高く見せたい、アピールしたいという欲求がある。

4.自我防衛機能
自身で認めたくない内的衝動や外的環境からの脅威から自我を守ろうとする欲求がある。例として抑圧や投影などがある。

適応機能は、道具的、功利主義的というドライな表現が用いられることもあります。トランプ大統領の十八番のディールが思い浮かびますが、置かれた環境に適応しようとする行動であり、忖度などもこの範疇に含まれそうです。

知識機能は、外部刺激を受けた際に状況が把握できないことで混乱が生じないよう、判断そして行動するためのベースとなる機能です。

価値創出機能は、他者に自分への理解を深めてもらうべく言動にふさわしい態度を準備しようとする機能です。人には自分をうまく表現したい、アピールしたいという欲求が存在します。

自我防衛機能はいくつかのパターンで説明できます。

フロイトは人間の精神的(心的)世界を、欲求衝動の解放を希求する無意識の層であるエス、外界との適合を図ろうとする層の自我(エゴ)、その自我に対して道徳的判断を下す超自我(スーパーエゴ)の3層に構造化しました。エゴはわがままなエスと道徳に縛られているスーパーエゴの間に立って、外界との円滑な適応を果たそうとしますが、その求められる役割の難易度は非常に高く不安定であることをフロイトは指摘しました。その不安定を何とか落ち着かせるために発揮する機能を複数挙げています。

  • 抑圧不安や苦痛の原因となる欲求や感情などを無意識の中に抑え込むこと。
  • 投影(投射)自分が受け入れ難い衝動や感情を他人に押し付けること。例えば、自分が関わりを持ったある人を嫌っていることを認めたくないために(自分は他者を嫌うような低レベルの人間ではない)、その人の方が「自分を嫌っているのだ」と押し付け、すり替えてしまうこと。
  • 反動形成ある欲求が行動に表れることを防ごうとしてそれと正反対にことをやってしまうこと。
  • 合理化自分の失敗を認めたくないために、何らかの口実をつくるなどして正当化すること。イソップ物語の「すっぱいブドウの木」が有名。
  • 昇華 直接的に表現してしまうと不都合が生じる欲求を社会的に認められる形で表現すること。防衛機能はネガティブとされるものが多いのですが、この昇華は肯定的評価といえるでしょう。

自我防衛機能とは文字通り自分の身を守るための機能です。

この防衛機能は、防衛とあるように自分の心身を守るための機能であり、一概に否定すべきものではありません。一方でカウンセリング(精神療法)ではこの防衛機能を解くことが治療における重要なテーマになるケースもあります。コーチングセッションにおいては、この防衛機能とのほどよい関係について、クライアントと意意見交換していく、というのもよいかもしれませんね。

(日向 薫)

心理学とコーチング ~対人認知 その2~(2020/02/18)

前回に続き、心理学的アプローチである「対人認知」を取り上げます。

前回の最後の下りで「思い込みの隘路」という表現を使いました。「この状況を理解し克服することがコーチングにおける重要なテーマである」ということです。そこで、対人認知において一般的に陥りがちな傾向に触れておきましょう。

ステレオタイプ的認知

比較的限られた情報しかないにも関わらず、何らかの形で他者を類型的に把握しようとする傾向です。人は一般に「わからない状態」を回避したいという性向があります。あいまいな状態のままでいることが苦手で、「○○ということだよね」と、とりあえず理解したという状況をつくろうとします。そこで「理解するにあたっての拠りどころ」を求めます。それがステレオタイプ的認知です。

容貌、体形、外観的特徴、性、年齢、職業、出生順、血液型、といったカテゴリー的情報によって相手を分類し、それぞれのカテゴリーに共通するとされるパーソナリティ特性をその人に当てはめてしまう、という認知の仕方です。

例えば、「日本人は生真面目である」「米国人は社交的だ」といった十把ひとからげで認知してしまい、冷静に考えれば、すべての日本人が生真面目で勤勉ではないことはわかっているのに、仲間内の話では、このカテゴリー化が飛び交うのが通例といえそうです。

時間と労力をかけないでとりあえず相手を把握する、という点での効用は否定できませんが、個人差への視点が希薄になります。さらに一般論であっても、カテゴリーのなかには科学的根拠のない文化的バイアスにより形成された否定すべき内容も散見されます。

このステレオタイプ的認知以外にも、一般的に陥りがちな傾向はいくつか存在します。

ハロー(後光)効果

ある一面の優れた能力を対象者の全体能力としてとらえてしまう傾向のことです。その優れた能力を、例えば「偏差値の高い某大学出身者」であることを根拠にしてしまうと、ステレオタイプ的認知と重なってしまうことになります。

逆ハロー効果

ハロー効果は対象者を実力以上に評価してしまう場合ですが、逆とあるように、対象者の一面の欠点を全体に拡大し評価してしまう傾向です。事業や芸術の分野で大成功した人たちが、全体観を持ったバランスある人たちばかりか、というと決してそうではなく、むしろ特化した能力を最大限発揮し、欠点とされる部分を自らコントロール、あるいは理解者を得てその欠点をサポートしてもらえる環境があったことで偉大な発明につながった、という事例はたくさんあります。

仮定された類似性

自分が好意を抱いている他者に対しては、その他者のパーソナリティを実際以上に自分と類似したパーソナリティであると認知する傾向です。「恋愛についてのウイットに富んだ金言至言」はたくさん存在するところです。その“錯覚”が媒介となって恋愛のエネルギーが高まっていく、ということもありますので一概に否定できませんが、それが高じることでストーカーになってしまったとしたら大いなる迷惑です。

対人認知において、留意しておかなければならい傾向を取り上げてみました。コーチングのスタートは、まずは相手のパーソナリティを把握し、ありのまま受け入れるところからスタートします。その最初の段階でボタンの掛け違いが生じてしまったら、リレーション形成そのものが成立しないことは自明です。

相手を正確に認知する行為は、実は多大なエネルギーを要するということなのです。そして、相手を理解する前にまず自分自身のパーソナリティを正しく把握することが何より大切であることを理解いただけたと思います。

(日向 薫)

「コーチングの学び方ワークショップ」日程を追加しました。(2020/02/12)

コーチングに興味関心がある方、学んでみたいと思っている方、プロになりたい方、実際に体験してみたい方にお勧めする「コーチングの学び方ワークショップ」、2020年3月の日程を追加しましたのでご報告いたします。

①2020年03月07日(土)15:00~16:30
②2020年03月14日(土)10:00~11:30

費用:2,000円(税込)
定員:各回6名
場所:「JR四谷駅」「丸ノ内線・南北線四ツ谷駅」赤坂口改札より徒歩5分

「コーチングの学び方ワークショップ」の詳細、お申し込みはこちらから
https://coaching-labo.co.jp/service/coaching-workshop

心理学とコーチング ~対人認知 その1~(2020/02/08)

コーチングはさまざまな理論、特に心理学をベースに発展してきました。心理学はとても幅広い学問です。学習心理学、知覚心理学、認知心理学、発達心理学、社会心理学、臨床心理学…。カテゴリーについては、いくつかの分類法が存在し、この6つについても一つのアプローチといえます。そこで、今回からコーチングを理解するうえで役立つと思われる理論をいくつか紹介していくことにします。

まずは、「対人認知」をとりあげます。

対人認知とは、他者を把握する際にさまざまな情報に基づいて、その人がとのような性格であるのか、どのような気持ちでいるのかなど、人の心理状態、内面特性を推定する行為のことで、理論化されています。

私たちは日々たくさんの人と接し、またマスコミなどを通じて直接会っていない人たちの情報を得ると、案外早いタイミングで、「○○さんって、■▲という人だよね」、と理解した気持ちになりがちです。

もちろんその中には、豊富な人生経験を通じて洞察力が磨かれ、相手の言動だけでなく挙措動作も含めた情報を短い時間で総合化し、それほど外れていない人物像を特定させることのできる人はいるでしょう。ただ多くの人が、その総合化に至らず、思い込んだ人物像を形成させ、とりあえず“安心する”というパターンが見受けられます。

「対人認知」は相手の全体像を把握する上で有効な理論です。

この「対人認知」は、私たちはどのように相手を認識しているのか、その枠組みを与えてくれます。認知対象がモノの場合、それはスペックで表されますので、万人が同一な内容を把握することが可能です。他方、対人認知は一筋縄ではいきません。そこには次のような特徴が見出せます。

  1. 対象の外面的特徴だけでなく、内面的な性格や態度、能力の把握が必要となり、情報処理において推論が多くのウエイトを占める。
  2. 対象は人であり、対象者も認知しようとする相手に働きかけを行う(場合も多い)。つまり相互作用により認知内容も変化していく。
  3. 手がかりとなる情報は、直接的に与えられる情報だけでなく、第三者から、そして本人自身の過去の経験も含めた情報が混在する。
  4. ③とも関連するが、認知者の個人的要因に規定されることが多い。形成されたパーソナリティ、態度、その時の感情が認知に当たって大きく影響する。

いかがでしょうか?
実際のコーチングでは、この特徴をしっかり理解しておくことが大切です。
コーチングのプロでも、「思い込み」の隘路に陥ってしまうことがあります

ジョハリの窓

最後に、人は自分のことを“実は知っているようで知っていない”ことを示唆してくれる「ジョハリの窓」を紹介しましょう。
これは「人には4つの窓があり、それぞれ以下の図で説明できる」というものです。
この図を理解することで、対人認知における齟齬を防ぐ一助になります。

ジョハリの窓

(日向 薫)

依存人生から脱却しよう!(2020/01/30)

あなたは、いまなぜ、その仕事をしているのでしょうか?

「小さい頃からやりたいことだったから」「たまたまご縁があったから」「就職試験で、ここしか受からなかったから」「お金のため仕方なく」など、それぞれの目的や理由があって、今の仕事に就いていることでしょう。

同じ人生なのに、ある人は「会社へ行くのが楽しみだ」という人もいれば、「毎日会社へ行くのが辛い」と感じている人もいます。出世街道を突っ走る人もいれば、なかなか出世できないでもがいている人もいます。

その違いはどこから来ているのでしょうか?
同じものや、同じチャンスを与えられ、同じようなスタートラインに立っているにもかかわらず、どうしてこのような違いが生じてしまうのでしょうか?

「能力がないから?」「学歴がないから?」「生まれ育った家庭環境が良くなかったから?」「貧乏でお金がなかったから?」「上司に恵まれなかったから?」「身体が弱かったから?」…
様々な理由が考えられるかもしれません。

選択の基準が、人生の結果を創り出している

ただ一つ言えることは、「あなたの選択の基準が、あなたの人生の結果を創り出している」ということです。今の自分は、すべてあなたが選択してきた結果です。

過去の人生の岐路ともいえる選択の場面を思い起こしてみましょう。
その時々に選択をしてきたあなたの「基準」はいったい何だったのでしょうか?
自分にとって何が大切だったのでしょう?
どんな価値観に基づいて選択してきたのかが見えてくると思います。

価値観とは、その人が「何を大切にするか」を示すものだからです。
私たちは、ほとんど無意識のうちに、価値観にしたがって優先度を決めています。

新たなビジネスに参入するかどうかの重要な判断も、「正しいか、正しくないか」よりも、「やりたいか、やりたくないか」が最終的な決め手になります。
この「やりたい」という自然な気持ちが価値観です。

未来は価値観によって創られる

何らかの選択肢があったとき、どの選択肢を選ぶかによって、未来の姿は異なってきます。もしも、論理的な分析によって未来が予測可能であるとすると、誰かによって描かれたシナリオをただ演じるだけのものとなってしまいます。一人ひとりの選択によって未来が違ってくるからこそ、創造性が発揮できます。

創造や変革は、これまでとは異なる未来を創り出すことです。
未来が自分の選択によって決まり、選択は価値観によって行われるものだとすれば、未来は価値観によって創られると言えます。そのため、「どうなりたいか」という未来のビジョンを見定めるためには、「何をやりたいか」という自分自身の価値観を理解していることが必要です。未来を観るためには、自分を知らなければならないということになります。

ところが私たちは自分の本当の価値観を認識していないことが多いです。
なぜなら、価値観には、内発的動機に基づく内発的価値観と外部の環境など外発的な動機に基づく外発的価値観があるからです。

内発的動機と外発的動機

内発的動機付けとは、その要因がその人の心の内面に無意識のうちに存在するものです。自分の内側から起こる動機付けのことです。好奇心や探求心が基になっていることが多いとされます。子どもの頃に夢中になっていたことを思い出してみましょう。虫の形や動きに魅了されて昆虫採集に我を忘れて楽しんでいたなどということがこれです。
「やりたいからやる」これが内発的動機付けの特徴であり、原動力です。生きていくうえでの生きがいにもなり、幸せのカギともなります。

一方、外発的動機付けに基づくものとは、外部から報酬や賞賛を得ることを目的とした動機付けのことをいいます。「上司に褒められたいから頑張る」「お金が欲しいから働く」などといった行動がそれに該当します。

内発的動機は意図的に持つことができないと言われます。そのため、外発的動機付けに影響を受ける可能性があります。「いつまで遊んでいるの、勉強しなさい!」と父親や母親から叱られた子どもが勉強を優先しなければならなくなり、結果的にその遊びに興味がなくなってしまうというケースもあります。

ビジネスパーソンの場合、会社生活にエネルギーの大部分を注いているうちに、「やるべきこと」を自分の「やりたいこと」と思い込んでしまい、後になって「こんなはずではなかった」などと気づくこともあったりします。自分の価値観が自分の内的動機付けに基づくものか、外発的なものかは、普段あまり意識していないので気づかないことが多いと思います。

外発的に形成された価値観は、個人の外側にあります。その発生源は尊敬する人などの他者であることもあれば、その人が所属する組織や社会にもあります。ビジネスの世界で、特に強い影響を及ぼすのは個人が所属する組織(会社)の価値観です。

組織の価値観を形成するものは、経営者の価値観によるところが大きいです。特に創業経営者の場合は、とても大きく影響してきます。また会社において長年、形成されてきた企業風土や会社の規則などもあります。特に社員を評価する人事評価制度も、社員個人の価値観に影響を大きな与えています。

会社に入るまでは組織の価値観の影響を受けていない人が、入社して5年、10年と経過するにつれ、自分の「やりたいこと」がいつの間にか、「やるべきこと」に変わっているといったことがおきます。そのことが悪いということではありません。外部から何かを期待されたり、要求されたりするからこそ、人は期待に応えようと、努力することができます。会社内に共有された価値観があるから、メンバーが同じ方向に向かって進むことができます。
会社は、全員が同じ方向に向かって進むことを目指して社員教育もしてきました。

自分の軸を持つ

問題は、私たちが無意識のうちに外発的な価値観に従ってしまうことです。自分の価値観を外部に置いてしまうと、人は受け身になってしまいます。外部の基準が変わってしまったときに、自分も変わることを強いられてしまうことです。今のような変化の激しい時代には、自分の軸を持たないと外部の変化に翻弄されかねません。

例えば、会社の中で、若い頃は大変評価が高く、出世の先頭を走っていたにも関わらず、組織の責任ある立場に就くと力を発揮できなくなってしまう人がいます。マネジメントスキルが不足していることに起因していることもありますが、多くは自分の軸をしっかり持っていないことによります。会社から目指すべき目標を与えられれば力を発揮できますが、自らそれを設定することができない、といったことが起きるからです。

変化の激しい環境の中では、自分が「何をやりたいか」「どうなりたいか」という信念をしっかり持っていなければ、自分が望む未来を実現することはできません。外発的なものであったとしても、それを変わらない価値観と調和させて自分の軸にしていくことが大切です。

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